大腸がんの余命や生存率は?ステージ別に解説
日本人のなかで罹患率がもっとも高いとされている大腸がん。死亡数も多く、進行すると余命宣告されるケースも少なくありません。
本記事では、大腸がんの統計やステージ別の生存率、余命宣告された場合の対処方法などについて解説します。早期発見を目指すための検診や検査についても触れていますので、参考にしてみてください。
目次
大腸がんの余命と統計
大腸がんは直腸や結腸に発生するがんです。良性のポリープががん化する場合と、正常な粘膜から発生する場合があります。日本人の大腸がんは、直腸とS状結腸にできやすいといわれています。
2019年の統計では、国内の年間の罹患者は15万人以上。男女の罹患数を合計すると、もっとも罹患数が多いがんです。がんで死亡した人の2021年統計では、大腸がんでの死亡数は男性が2位、女性が1位で、男女合計の死亡数は2位でした。
大腸がんの罹患率は中高年が増加傾向にあります。また、罹患数は死亡数の約2倍で、これは大腸がんの生存率が比較的高いことを示しています。
大腸がんの余命の指標のひとつとして「生存率」があります。生存率の詳細については後述します。
※「生存率」はあくまで統計であり、患者ひとりひとりの余命を決定づけるものではありません。
出典:
がん種別統計情報 大腸|国立研究開発法人 国立がん研究センター
最新がん統計|国立研究開発法人 国立がん研究センター
大腸がんのステージと生存率
大腸がんのステージは0期~IV期に分かれます。大腸がんのステージは、深達度やリンパ節転移の程度、遠隔転移の有無などにより決まります。また、画像診断から予測する「臨床分類ステージ」と切除した組織などの調査結果から診断する「病理分類ステージ」があり、その結果をもって治療方針が決められます。
ここでは、ステージ別の状態と大腸がんの生存率について解説します。
ステージ0期
大腸がんのステージ0期は、がんが粘膜内にとどまっている状態。ステージ0期は早期がんとされます。
ステージI期
大腸がんのステージI期は、がんが固有筋層にとどまっている状態です。
ステージI期の5年相対生存率は、94.5%とされています。
ステージII期
大腸がんのステージII期は、がんが固有筋層の外まで浸潤している状態です。
ステージII期の5年相対生存率は、88.4%とされています。
ステージIII期
大腸がんのステージIII期は、リンパ節転移がある状態です。
ステージIII期の5年相対生存率は、77.3%とされています。
ステージIV期
大腸がんのステージIV期は、肺や肝臓への血行性転移や腹膜播種(ふくまくはしゅ)がある状態です。
ステージIV期の5年相対生存率は、18.7%とされています。
※相対生存率とは、他の病気による死亡を除いた生存率のことをいいます。
出典:
大腸がん(結腸がん・直腸がん) 治療|国立研究開発法人 国立がん研究センター
大腸がん 2013-2014年5年生存率|国立研究開発法人 国立がん研究センター
大腸がんのステージについて詳しくお知りになりたい方は、こちらからお電話ください。
大腸がんの原因
大腸がんの原因は、生活習慣や家族歴がかかわると考えられています。それぞれについて詳しくみていきましょう。
生活習慣
大腸がんの発生原因として考えられているもののひとつに、生活習慣があります。飲酒・喫煙・肥満などが挙げられますが、なかでも食習慣はとくにリスクを高めるとされています。女性の場合、赤身肉や加工肉の摂取が大腸がんのリスク因子となるといわれています。
遺伝性大腸がん
大腸がんのなかには、遺伝がかかわるものもあります。家族のなかでがんが集積して発生する「遺伝性腫瘍症候群」というものがあり、下記の特徴があります。
- ・家系内に若くしてがんに罹患した人がいる
- ・家系内に複数回がんに罹患した人がいる
- ・家系内に特定のがんが多く発生している
大腸がんにはおもに2種類の遺伝性腫瘍症候群があり、家族性大腸腺腫症(ポリポーシス)やリンチ症候群の家系の場合、大腸がん発症のリスクを高めるとされています。
関連ページ:がんは遺伝する?遺伝するがんや遺伝子検査などについて解説
大腸がんの予防
大腸がんの原因のひとつに肥満があり、運動は予防効果が期待できます。食生活においては、食物繊維・カルシウムの摂取が罹患リスクを下げると期待されています。
また、がん全般の予防として、「日本人のためのがん予防法」というガイドラインが提唱されています。
予防に重要な6つの要素は「禁煙」「節酒」「食生活」「身体活動」「適正体重の維持」「感染」。「感染」以外は生活習慣に基づきます。5つの健康習慣を実践した場合、0~1つを実践した場合と比べて、男性で43%、女性で37%、がんになるリスクが低下するという推計結果も出ています。
出典:日本人のためのがん予防法|国立研究開発法人 国立がん研究センター 予防研究グループ
大腸がんで余命宣告されたら
大腸がんのステージIVの5年相対生存率は18.7%。結腸がんの場合、16.5%とされています。ステージIVの進行がんの場合、余命宣告されるケースも少なくありません。自身や家族が余命宣告された場合にどのようにしたらよいかや、術後の療養について解説します。
余命宣告されたら
余命宣告された場合、できるだけ患者の意思を尊重するのが望ましいです。患者本人の気持ちを理解するよう努め、寄り添うことが必要です。一方で、家族も看病や療養生活で疲弊してしまうことがあるため、家族自身も自分を大切にするとよいでしょう。
がんに関する悩みごとや困りごとの相談窓口もありますので、参考にしてみてください。
出典:「がん相談支援センター」とは|国立がん研究センター がん情報サービス
大腸がんの術後の療養
大腸がんの手術後は、大腸に負担をかけないような食事を摂ったほうがよいでしょう。食物繊維が多いもの、消化しにくいものは避け、よく咀嚼し、食べ過ぎないことを心がけましょう。末期とされる状態では食欲が落ちやすいですが、できるだけ口から栄養を摂ることが大切です。
下痢が続くこともあるため、外出時も注意が必要です。下着の中にパッドを付ける、着替えを用意する、トイレの場所をあらかじめ調べておくなどの対策を講じることができます。
人工肛門(ストーマ)を作った場合は、多機能トイレやオストメイト対応トイレの場所を調べておくとよいでしょう。
関連ページ:大腸がんの末期症状とは?検査方法や術後の療養・生存率について
大腸がんの早期発見のために
大腸がんの早期発見のためには、検診の受診が有用です。
厚生労働省「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針(令和3年一部改正)」において、大腸がん検診は科学的根拠に基づいた検診として推奨されています。男女ともに40歳以上が対象で、無償または一部の自己負担で検診が受けられます。
そのほか、保険適用外ではありますが、遺伝子検査というものもあります。遺伝子検査は、がんの超早期発見、再発防止、予防などを目的としています。また、がんにかかりやすいかどうかや、効果的な薬剤などを検査結果から読み取ることができます。
関連ページ:遺伝子検査|GENEクリニック