前立腺肥大症の症状とは?初期~進行時症状や合併症などについて詳しく解説
年齢を重ねると、排尿時の症状が気になるという男性は多いのではないでしょうか。そこで多くの方が思いつくのは「前立腺肥大症」かと思います。
本記事では、前立腺肥大症の代表的な症状について解説。原因や予防などについても触れていますので、参考にしてみてください。
目次
前立腺肥大(前立腺肥大症)とは?
前立腺は男性特有の臓器で、膀胱の出口、尿道を囲む場所に位置します。精液の一部である前立腺液を作ったり、精子を保護する役割があります。
若い時はクルミほどの大きさで、加齢とともに大きくなっていきます。前立腺がみかんや卵ほどに大きくなり尿道を圧迫することによって、排尿や畜尿に影響を及ぼすことを前立腺肥大症といいます。
前立腺肥大自体は50歳で30%、60歳で60%、80歳になると90%ほどの男性にみられますが、症状を伴わない場合もあります。治療を必要とするケースは全体の25%前後とされています。
症状の詳細は後述しますが、重症化した場合は膀胱結石や腎臓が腫れる「水腎症」などの腎機能障害を引き起こすことがあります。
前立腺肥大症の症状
前立腺肥大症の症状は、尿を出すときの「排尿症状」、尿を貯めるときの「畜尿症状」、排尿後の「排尿後症状」に分けられます。それぞれ分けて解説するとともに、進行度別の症状も見ていきましょう。
排尿症状
排尿時の主な症状は「排尿困難」。尿が出にくい症状の総称です。具体的には以下のような症状が出ます。
- ・尿が出始めるまでに時間がかかる
- ・尿の勢いが弱い
- ・排尿途中で尿が切れる
- ・力まないと尿が出ない
- ・尿が分かれる など
畜尿症状
畜尿の主な症状は「頻尿」です。膀胱が圧迫されることで、尿を貯めにくくなることが主な要因と考えられています。具体的な症状は以下のとおりです。
- ・日中に概ね8回以上トイレに行く
- ・就寝後1回以上トイレに起きる
- ・急に強い尿意が起こる「尿意切迫感」
- ・トイレに間に合わない「切迫性尿失禁」など
排尿が上手くできず、膀胱内に尿が多量に残ると結果的に頻尿になる場合もあります。また、尿意切迫感があり、かつ頻尿を伴う場合は「過活動膀胱」とされ、前立腺肥大症の約50~70%の患者にみられます。
前立腺肥大症以外にも、脳卒中、パーキンソン病、膀胱炎、前立腺炎、高血圧などでも頻尿が起こる場合があります。
排尿後症状
排尿後症状の主なものは「残尿感」です。具体的には以下のような症状が現れます。
- ・排尿後も尿が残っている気がする
- ・スッキリしない
- ・排尿が終わった後に尿が漏れる「排尿後尿滴下」 など
進行度別の症状
前立腺肥大症は進行度によっても症状が異なりますので、進行度別の症状についても解説します。
軽症(膀胱刺激期)
前立腺肥大症の代表的な初期症状は以下のとおりです。
- ・トイレに行く回数が多い
- ・尿の勢いが弱い
- ・トイレに行ったばかりでもまたすぐに行きたくなる など
原因は、肥大した前立腺が膀胱や尿道を刺激するためと考えられています。
中等症(残尿発生期)
前立腺肥大症の代表的な中等症状は以下のとおりです。
- ・尿が出るまでに時間がかかる
- ・力まないと尿が出ない
- ・尿のキレが悪い
- ・排尿時間が長い
- ・尿が途中で途切れる など
原因は、肥大した前立腺により尿道が圧迫されて細くなる、膀胱に尿が貯まり出し切れない、などが考えられます。
重症(慢性閉塞期)
前立腺肥大症が重症になると、以下のような症状が現れます。
- ・トイレの回数が非常に多い(1日10回以上など)
- ・1回のトイレの時間が数分かかる
- ・尿が少量しか出ない
- ・尿が出ないためお腹が苦しい
重症化すると「尿閉」といって排尿できなくなったり、下腹部に膨満感や強い痛みが生じたりすることもあります。
前立腺肥大症の合併症
前立腺肥大症の進行度別の症状については前述しましたが、進行すると合併症を引き起こすこともあります。ここでは、代表的な合併症について解説します。
血尿
前立腺肥大症が進行すると、目で見てわかる「肉眼的血尿」が起こることがあります。これは、尿道粘膜が充血し、前立腺部の尿道粘膜から出血するためと考えられています。
尿路感染
排尿障害により膀胱に尿が残ってしまうと、尿路感染が起きやすくなります。尿と一緒に細菌を排出する力が弱まることが原因と考えられています。痛みや発熱を伴うこともあります。
溢流性(いつりゅうせい)尿失禁
尿道から尿が溢れ出してしまい、いつまでも漏れ出てくる状態を「溢流性尿失禁」といいます。膀胱内の多量の残尿のために、膀胱内に尿が貯められなくなる症状です。
尿閉
尿閉は、膀胱からの尿の流れが完全に妨げられ、排尿できなくなることをいいます。下腹部の膨満感や強い痛みを伴うこともあります。長時間排尿しない、動かずじっとしている、冷気に晒されるなどをきっかけとして起こることがあり、飲酒や風邪薬の服用などが原因になるケースもあります。
膀胱結石や腎機能障害
そのほか、膀胱内に尿が残ることで、膀胱結石や腎臓機能に影響を及ぼすことがあります。
前立腺肥大症の検査
前立腺肥大症の検査でまず行うのは問診です。世界共通で用いられる「国際前立腺症状スコア」をもとに自覚症状の評価を行います。国際前立腺スコアでは、残尿感や排尿回数などについて6~7段階に分けて質問し、合計点数で進行度を判断します。また、日常生活にどれくらい支障があるかについても、このスコアで評価します。
その他基本的な検査として、尿検査、尿流量測定、血清PSA(前立腺特異抗原)測定、エコー検査などを用います。症状によっては、患者自身による排尿日誌、尿流動態検査、血清クレアチニン測定などを行うこともあります。
出典:国際前立腺症状スコア|日本泌尿器科学会 前立腺肥大症診療ガイドライン
前立腺肥大症の原因
前立腺肥大症の原因はまだはっきりとは解明されていません。ただし、加齢とともに前立腺が肥大することは明らかで、特に50~60代以降になると顕著です。そのため、テストステロンなどの男性ホルモンが関連していると考えられています。
その他、肥満や高血圧、糖尿病などの生活習慣病との関連も指摘されています。
前立腺肥大症の予防
前立腺肥大症は、日常生活上のセルフケアで症状の軽減が期待できます。セルフケアの一例としては
- ・尿を我慢しない
- ・身体を冷やさない
- ・長時間同じ姿勢で過ごさない
- ・便秘に注意する
- ・適度な運動をする
- ・水分の過剰摂取は控える
- ・アルコールの過剰摂取は控える
- ・ノンカフェインの飲み物を摂取する
などが挙げられます。
また、野菜や穀物、大豆などに含まれるイソフラボノイドに前立腺肥大症発症の抑制効果があるという研究結果もあります。
市販薬や処方薬で前立腺肥大症の症状が悪化することもあるので、服薬は医師に相談することを推奨します。
関連ページ:
前立腺の痛みは何が原因?考えられる病気や必要な検査について解説
前立腺がんの死亡率はどのくらい?リスク因子や予防についても解説