乳がんのしこりはどんなもの?特徴や乳がん以外のしこりについても解説
乳房のしこりに気付いたとき、真っ先に心配されるのは乳がんではないでしょうか。本記事では、乳がんのしこりの特徴やできやすい場所、しこり以外の症状などについて解説します。また、乳房のしこりは良性疾患であることも多いため、乳がん以外のしこりの原因についても触れています。参考にしてみてください。
目次
乳がんのしこりの特徴
乳がんの代表的な症状とされるものは、しこりです。腫瘍が約1cm以上になると、触って分かるようになります。実際、乳がん患者の多くは、しこりなどの自覚症状があるといわれています。
乳がんのしこりの特徴は、痛みを伴わない・硬い・あまり動かないなどが挙げられます。一方で、乳がん以外のしこりは、比較的弾力がある・触ると動く、などが特徴です。
乳房のしこりの大部分は良性であることが多いですが、触れただけでは良性や悪性の判断はできません。また、乳がんであっても上記に当てはまらない症状が出ることもあります。乳がんかそうでないかの確定のためには、詳しい検査が必要です。
乳房の構造について
乳房は乳汁を分泌する乳腺と、乳腺を包む脂肪組織で構成されています。乳腺は15~20の乳腺葉に分かれ、乳頭から放射状に広がっています。さらに乳腺葉は、小葉が集まった腺房という組織と乳管で構成されていて、ぶどうの房のような形をしています。
また、乳房には多くのリンパ管が通っています。リンパ管は脇の下(腋窩)に集約され、その他鎖骨周辺などにもあります。
乳がんが発生しやすい場所
乳がんの多くは乳管から発生します。その他、小葉や乳腺以外の組織から発生することもあります。また、乳房の付近には多くのリンパ節があるため、そのようなリンパ節や骨・他臓器に転移するケースもあります。
乳がんが発生しやすい場所は、乳房の外側上方が一番多く、次いで内側上方、外側下方、内側下方、乳首周辺という順になっています。
しこり以外の乳がんの症状
乳がんのしこりの特徴は冒頭で述べたとおりです。しこり以外にも乳がんが考えられる兆候がありますので、その症状の例について解説します。
乳房の左右非対称
乳がんができると、乳房の左右が非対称になることがあります。大きさや形状の変化をはじめ、えくぼのようなくぼみや乳頭のへこみ、片方だけの皮膚が赤く変化している、などにも注意が必要です。
乳頭からの分泌物
妊娠中や授乳期以外で、乳頭から分泌物が出る場合も乳がんの可能性が考えられます。特に血が混じった分泌物が出る場合は注意したいケースです。しこりがなく、乳頭分泌だけが起こる「無腫瘤性乳がん」というものもあります。
乳房のひきつれやただれ
乳がんが原因で、皮膚が変化することもあります。がんが大きくなってくると、乳房の内側から皮膚が引っ張られ、ひきつれやくぼみなどが現れることがあります。
湿疹のようなものができてなかなか治らない場合、「パジェット病」と呼ばれる乳がんの一種の可能性もあります。
当てはまる症状がある方は、お気軽にこちらからご相談ください。
乳がん以外でしこりができる原因
乳房のしこりは良性であることが多いというのは先述のとおりです。ここからは、乳がん以外のしこりの原因について解説します。
乳腺症
いわゆる乳腺症は、主に30~40代女性にみられる乳腺の良性変化の総称です。しこりに気づいて受診した際や、乳がん検診後の精密検査等で見つかりやすいものです。
嚢胞や乳管内乳頭腫、腺症などがあり、しこりや痛み、乳頭分泌として現れることがあります。ホルモンや月経周期と関わっており、月経前には大きくなり、月経後には縮小するケースが多いことが特徴です。
乳腺炎
乳腺炎は、乳房内で乳汁(母乳)がうっ滞したり、細菌感染したりすることで起こる炎症です。乳房が腫れたり膿が溜まったりして、高熱や痛みを伴うことがあります。
授乳期以外の乳腺炎の原因は明らかになっていませんが、乳房の中の分泌液にリンパ球などが反応して起こると考えられています。
乳腺繊維腺腫
乳腺繊維腺腫は、10代後半~40代に多く見られる代表的な乳房の良性腫瘍です。しこりの特徴としては、触るとコロコロと動き、基本的に痛みはありません。閉経後に縮小するケースが多いことが特徴です。
葉状腫瘍
しこりの状態としては乳腺繊維腺腫に似ていますが、葉状腫瘍の場合は急激に大きくなるという特徴があります。良性のケースが多いですが、悪性や、悪性と良性の中間の場合もあります。
乳房のしこりの検査
乳房にしこりがある場合、各種検査を用いて、乳がんかどうかや疾患があるかどうかを特定します。ここでは、しこりの詳しい検査方法について解説します。
問診・視触診
乳房のしこりが気になって受診した際、最初に行われるのは問診や視触診です。
問診では、しこりに気付いた時期や変化のスピードなどのほか、家族でがんに罹ったことがある人がいるかなども確認します。視触診では、乳房の左右差やしこりの状態などを調べます。
マンモグラフィ
マンモグラフィ検査は、乳房専用のX線検査です。小さな病変や微細な石灰化も見つけることができ、乳がん検診では国際基準とされ用いられています。良性のしこりなのか、悪性なのかも調べることができる検査です。
超音波(エコー)検査やその他検査
超音波検査は、マンモグラフィで見つけにくい高濃度乳房のしこりの有無を見つけやすい検査です。しこりの形状や境目部分で良性・悪性を判断できます。
その他、MRI検査は、がんであることが疑われる場合や、がんであることが判明した場合に用いられることが多い検査です。また、乳房に針を刺して病変を採取し、がんの有無を調べる病理検査も用いられます。
遺伝子検査
乳がんに関しては、約5~10%が遺伝性といわれています。遺伝性乳がんに関わる遺伝子に変異があるかどうかを調べるための遺伝子検査は、一定の要件を満たしていれば保険適用で受けられます。
保険適用外の遺伝子検査では、がんにかかりやすいかどうかや、がんの超早期発見を目的とする検査があります。
出典:遺伝性乳がん卵巣がんを知ろう!|一般社団法人 日本遺伝性乳癌卵巣癌総合診療制度機構
関連ページ:
遺伝子検査|GENEクリニック
がんは遺伝する?遺伝するがんや遺伝子検査などについて解説
乳がんのセルフチェック
近年、自分の乳房を意識する「ブレスト・アウェアネス」という考え方が提唱されています。日ごろの乳房の状態を知ったり意識したりすることが重要、という考え方です。
考え方のポイントは以下のとおりです。
- ①自分の乳房の状態を知るために,日頃から自分の乳房を,見て,触って,感じる(乳房のセルフチェック)
- ②気をつけなければいけない乳房の変化を知る(しこりや血性の乳頭分泌など)
- ③上記②の乳房の変化を自覚したら,なるべく早く医療機関を受診する
- ④40歳になったら定期的に乳がん検診を受ける
セルフチェックについては下記ページにて詳しく解説していますので、参考にしてみてください。
関連ページ:乳がんのチェック方法は?セルフチェックや病院での検査について解説
ただし、安易な自己判断は禁物です。少しでも異常を感じたら、必ず医療機関を受診しましょう。
関連ページ:
乳がんの初期症状とは?早期発見の重要性やポイントも解説
乳がんに痛みはある?痛みを伴う乳がんの症状や乳がん以外の痛みについても解説
乳がんの予防はできるのか?乳がんの原因と予防
乳がんの原因とは?予防や早期発見の可能性についても解説