大腸がんの検査|検診や原因についても解説
日本人の罹患数・死亡数上位の大腸がん。大腸がん検診で要精密検査となった経験がある方もいると思います。本記事では、大腸がんの検査や検診について詳しく解説します。また、大腸がんの原因や大腸ポリープとの関係についても触れていますので、参考にしてみてください。
目次
大腸がんの検査・検診の必要性
大腸がんは、日本人の罹患数・死亡数ともに上位に位置するがんです。男女ともに、40代から罹患率が上昇する傾向にあります。
ステージIのネット・サバイバルは92.3%であるのに対し、ステージIVでは18.3%とされています。
※ネット・サバイバル:純粋に「がんのみが死因となる状況」を仮定して計算した生存率
ステージIの生存率が比較的高いことからもわかるように、早期発見できれば治癒も見込めるがんといえるでしょう。早期発見のためには、定期的な検診の受診と、「要精密検査」となった場合の検査の受診が推奨されています。
出典:
最新がん統計|国立研究開発法人 国立がん研究センター がん情報サービス
大腸がん 2014-2015年5年生存率|国立研究開発法人 国立がん研究センター
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大腸がんの検査
大腸がんの検査は、自覚症状があり医療機関を受診した際や、大腸がん検診で「要精密検査」となった場合などに行われます。さまざまな検査を用いて、大腸がんの確定診断やがんの位置、広がり、転移の有無などを調べます。
ここでは、それぞれの検査について詳しく解説します。
大腸内視鏡検査
大腸内視鏡検査は、大腸がんが疑われる場合に最初に行われる検査です。
肛門から内視鏡を挿入して、直腸から盲腸まで詳しく調べます。医療機関により最大100倍まで拡大できる器具を使用しているケースもあり、小さな病変でも早期発見できる可能性が高い検査です。
その他、病巣の広がり、表面の形状、色の変化なども観察します。場合により、色素を使って検査することもあります。また、検査中に病変の全体もしくは一部を切除し、病理診断が行われる場合もあります。
大腸CT検査(CTC:CTコロノグラフィ)
大腸CT検査は、近年普及してきた検査で、「CTコロノグラフィ」とも呼ばれます。
大腸に炭酸ガスを注入して膨らませ、CTを撮影する検査です。通常のCT検査と比べ、全身から大腸の内側まで精密に調べることができます。検査は10~20分ほどで、身体への負担が少ないことが特徴です。
腹部の手術歴があって大腸内視鏡が入りにくい場合や、内視鏡検査の痛みが心配な人にも対応できることがメリットです。半面、組織の採取ができない点や、平坦な病変がわかりにくいなどのデメリットもあります。
直腸指診
大腸のなかでもがんの発生頻度が高い直腸のがんが疑われる場合、直腸指診を行うことがあります。
医師が肛門から直接指を挿入し、直腸内の異常やしこり・粘液性の分泌物の有無などを調べる検査です。直腸がんの約80%は直腸指診で見つかるとされています。
注腸造影検査(注腸X線検査)
注腸造影検査は、肛門からバリウムと空気を入れて腸を膨らませ、X線で画像撮影する検査です。がんの正確な位置、大きさ、腸の内径、粘膜の様子などを調べます。がんがある場合、腸管の壁の変形や粘膜のひだに異常が発生するためです。
盲腸・直腸・S状結腸のがんで、腸が重なっている場合などは見つけにくいというデメリットがあります。
その他の検査
その他の検査については、以下のようなものがあります。
- ・PET検査:放射性ブドウ糖を注射し、全身のがん細胞を調べる検査
- ・腫瘍マーカー検査:血液検査で腫瘍マーカーの値(大腸がんの場合「CEA」「CA19-9」)を調べる検査(ただし、がんであっても腫瘍マーカーの値が高くならない場合や、反対に、がんでなくても値が高くなる場合もある)
- ・CT、MRI、超音波検査:大腸内視鏡検査などとあわせて行われる検査。大腸がんそのものだけでなく、肝臓などの他臓器やリンパ節への転移、がんの再発の有無などを調べる際にも用いられる。
遺伝子検査
詳細は後述しますが、大腸がんには遺伝性のものがあります。
遺伝性腫瘍の典型例としては、家族性大腸腺腫症(家族性大腸ポリポーシス)、リンチ症候群が挙げられ、どちらも特定のがん抑制遺伝子の変異が関係しています。そのため、医師が必要と判断した場合には、遺伝子検査も行われることがあります。
また、がんにかかりやすいかどうかを調べたり、がんの超早期発見を目的とした、有償の遺伝子検査もあります。
関連ページ:遺伝子検査|GENEクリニック
大腸がん検診
大腸がん検診は、国が推奨しているがん検診のひとつです。
40歳以上の男女を対象に、年に1回の検診が推奨され、多くの自治体で無償または一部の自己負担で受診できます。
一般的には、大腸がん検診には便潜血検査が用いられ、「要精密検査」となった場合は大腸内視鏡検査などが行われます。
便潜血検査
便潜血検査、いわゆる検便は、大腸がんや大腸ポリープの検査としてもっとも簡便なもので、大腸がん検診に用いられています。がんやポリープができると、腸内で擦れて出血することがあるため、便内の血液を調べることが目的です。通常は2日分の便を採取、検査します。
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大腸がんの原因
大腸がんの発生要因と考えられているものは、家族歴や年齢、生活習慣などです。それぞれの原因について、さらに大腸ポリープとの関連も解説します。
大腸がんの原因①家族歴・年齢
大腸がんの家族歴がある場合、発生リスクが高まることが明らかになっています。
家族性大腸腺腫症(家族性大腸ポリポーシス)やリンチ症候群は遺伝性腫瘍の典型例で、家族に罹患者がいる場合、大腸がんの発生リスクが高いとされています。とくに家族性大腸腺腫症は、若いうちから大腸に100個以上のポリープができる疾患で、放置するとがん化します。
また、50歳以上の年齢も、大腸がん発生の可能性が高くなるともいわれています。
関連ページ:がんは遺伝する?遺伝するがんや遺伝子検査などについて解説
大腸がんの原因②生活習慣
生活習慣の面では、喫煙・飲酒・肥満が大腸がんの発生リスクを高めるとされています。女性の場合はとくに、加工肉や赤身肉の過剰摂取もリスク要因として挙げられています。
がんの家族歴と生活習慣が複合的にがんのリスクを上げるとも考えられるため、生活習慣の改善は意識したほうが良いでしょう。
国内では、科学的根拠に基づくがん全般の予防として、禁煙・節度のある飲酒・バランスの良い食事・身体活動・適正な体形の維持・感染予防が提唱されています。
大腸がんと大腸ポリープの関係
大腸がんと大腸ポリープの関係は密接です。
大腸ポリープは腫瘍性ポリープと非腫瘍性ポリープに大別され、さらに腫瘍性ポリープは悪性・良性に分けられます。大腸ポリープががん化する過程の多くは、良性腫瘍(腺腫)が悪性化するケースと考えられています。
その他、ポリープの状態を経ずにがん化する場合や、まれに非腫瘍性ポリープががん化することもあります。このことから、大腸ポリープを切除することにより、大腸がんになりにくくなるとされています。
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