乳がんの末期症状とは?検査方法や術後の療養・生存率について
女性の罹患率が高い乳がん。その末期症状とはどのようなものなのでしょうか。本記事では、乳がんのステージや5年生存率、末期症状などについて解説します。手術後の療養や再発予防についても解説しますので、参考にしてみてください。
目次
乳がんとは
乳がんは、乳腺組織にできるがんです。乳管から発生するケースがほとんどですが、一部乳腺小葉や乳腺以外の乳房の組織から発生することもあります。進行すると、乳房のまわりのリンパ節や他臓器に転移することがあります。
2018年の統計では女性の罹患数第1位のがんで、40歳を過ぎたころから罹患率が高くなる傾向がみられます。
また、乳がんは「ルミナルA型」「トリプルネガティブ」などのサブタイプというものが解明されていて、サブタイプごとの治療法が確立されています。そのため、5年生存率も近年大幅に改善しているといわれています。
乳がんのステージと生存率
乳がんのステージは0期~IV期の5つに分けられます。それぞれのステージの状態を解説するとともに、ステージ別の生存率についてもあわせて紹介します。(生存率はあくまで統計であり、患者ひとりひとりの余命を決定づけるものではありません。)
ステージ別の生存率の特徴として、ステージIII期までは5年生存率が80%以上ありますが、ステージIV期になると30%台まで落ち込むことが挙げられます。
ステージ0期
乳がんのステージ0期はきわめて早期のがんで、非浸潤がんです。はっきりとした症状やしこりなどもないことが多いです。また、乳頭の皮膚にがん細胞が進展する「パジェット病」の場合もステージ0期とされます。
ステージI期
乳がんのステージI期は、がんの大きさが2cm以下、かつリンパ節や他臓器への転移がない状態を指します。
5年相対生存率は99.8%とされています。
※相対生存率とは、他の病気による死亡の影響を取り除いた生存率のことをいいます
ステージIIA期・IIB期
乳がんのステージII期はIIA期とIIB期の2つに分類され、次のいずれかの状態を指します。
IIA期:
- ・がんの大きさが2cm以下、かつわきの下のリンパ節転移あり。そのリンパ節が固定されておらず動く状態。
- ・がんが2cmを超え5cm以下、かつリンパ節や他臓器への転移なし。
IIB期:
- ・がんの大きさが2cmを超え5cm以下、わきの下のリンパ節に転移あり。そのリンパ節が固定されておらず動く状態。
- ・がんが5cmを超え、リンパ節や他臓器への転移なし。
ステージII期の5年相対生存率は95.5%とされています。
ステージIIIA期・IIIB期・IIIC期
乳がんのステージIII期は、IIIA期・IIIB期・IIIC期の3つに分類され、次のいずれかの状態を指します。
IIIA期:
- ・がんの大きさが5cm以下、かつわきの下のリンパ節転移あり。そのリンパ節が固定されていて動かない、もしくはリンパ節が互いに癒着している状態。
- ・わきの下のリンパ節に転移はないが、胸骨の内側のリンパ節に転移あり。
- ・しこりの大きさが5cm以上で、わきの下または胸骨の内側のリンパ節に転移あり。
IIIB期:
- ・がんの大きさやリンパ節への転移の有無にかかわらず、しこりが胸壁に固定されている。
- ・がんが皮膚に出たり皮膚が崩れたり、むくんでいる状態。(しこりがない炎症性乳がんも含む)
IIIC期:
- ・がんの大きさにかかわらず、わきの下のリンパ節と胸骨の内側のリンパ節の両方に転移あり。
- ・鎖骨の上下にあるリンパ節へ転移あり。
ステージIII期の5年相対生存率は80.7%とされています。
ステージIV期
乳がんのステージIV期は、他の離れた臓器(骨、肺、肝臓、脳など)への遠隔転移がある状態を指します。
ステージIV期の5年相対生存率は38.7%とされています。
出典:乳がん 2013-2014年5年生存率|国立研究開発法人国立がん研究センター
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乳がんの検査方法
ここでは、乳がんの確定やステージの決定のために行う検査について解説します。
マンモグラフィ検査
マンモグラフィ検査は、乳がんの検査として一般的な検査方法です。乳房専用のX線検査で、2枚の板で乳房を挟んで薄く伸ばし撮影します。小さな病変や微細な石灰化を見つけることができるため、早期発見に役立つ検査とされています。ただし、高濃度乳房では病変が見つかりにくいこともあります。
エコー(超音波)検査
エコー(超音波)検査は、乳房の表面に超音波プロープを当て、画像を撮影する検査です。病変の有無やしこりの大きさ・状態、周囲のリンパ節への転移などを調べます。マンモグラフィ検査で病変が見つかりにくい高濃度乳房の場合、がんの発生部位が黒く写るエコー検査のほうが適しているとされています。
また、エコー検査は放射線被ばくがないため、妊娠中でも検査可能です。場合によっては、エコー画像を確認しながら、組織や細胞を採取することもあります。
CT・MRI検査
CT検査はX線を、MRI検査は磁気を使って、さまざまな角度から身体を撮影する検査です。主に、病変の広がりや遠隔転移などを調べるのに用います。複数のしこりが離れた場所に発生する「多発乳がん」は、MRI検査のみで発見できるとされています。
また、近年「DWIBS(ドゥイブス)」という検査方法も普及してきています。全身のがんリスクを一度に調べるMRI検査で、痛みを伴わず、衣服を着たままで気軽に受診できるメリットがあります。
視触診
視触診は、乳房の異変を目で見たり触ったりして確認する検査です。乳房の左右非対称、ただれ・えくぼの有無、乳頭からの分泌物などを調べます。
近年では、マンモグラフィ検査とエコー検査を併用することによりがんを見つけられるケースが多いことがわかっており、視触診のみでがんを見つけられるケースが少ないことから、視触診は不要との論調もあります。
また、乳がんは自分でしこりなどを確認するセルフチェックを行うことで、発見に繋がるケースもあります。
関連記事:乳がんのチェック方法は?セルフチェックや病院での検査について解説
病理検査(生検)
病理検査は、病変部分を採取して確定診断を行うために用いる検査です。病理検査は細胞診と組織診があり、細胞診は乳頭から出る分泌物や、病変に細い針を刺して採取した細胞を調べます。組織診は、局所麻酔を使用し、マンモグラフィやエコーで確認しながら細胞を採取します。
リンパ節への転移については、手術中に「センチネルリンパ節生検」という生検を行って調べることもあります。
なお、乳がんの早期発見には乳がん検診が有効ですが、日本では欧米に比べ検診受診率が低いことが問題視されています。
乳がん末期の状態や症状
ここでは、乳がん末期の状態や症状について詳しく解説します。
乳がん末期の状態は?
先述したように、乳がんのステージIVの状態は、他の離れた臓器(骨、肺、肝臓、脳など)への遠隔転移がある状態を指します。ただし、ステージIV=末期というわけではなく、「がん末期」については、厚生労働省が「治癒を目指した治療に反応せず、進行性かつ治癒困難又は治癒不能と考えられる状態と医師が総合的に判断した場合」と定義しています。
出典:特定疾病における「がん末期」の取扱い等について|厚生労働省
乳がん末期の症状は?
乳がんの早期では、乳房のしこり、左右差、乳頭のただれや分泌物などがあり、末期になると痛みが出てくることが多くなります。痛みは、がん細胞が増殖し炎症を起こしたり、潰瘍が発生したりすることによるものです。
手術をした場合は疼痛が発生することもあります。また、放射線治療を行うと、リンパ浮腫が起こることもあります。そのほか、倦怠感や疲労感といったものも、代表的な症状といえるでしょう。治療の内容によっては、腕や肩を動かしにくくなる、わきの皮膚が突っ張るなどといった症状が起こりやすくなります。
乳がん末期における療養
放射線治療や、手術で腋窩リンパ節郭清(リンパ節切除)を行った場合、リンパ浮腫が起きる可能性があります。発症すると治りにくいため、早期に対策をしたほうが良いでしょう。自分でできる対処方法としては、保湿などのスキンケア、身体を動かしリンパ液の流れを促進する、などがあります。
乳がんの発症は女性ホルモン(エストロゲン)との関係が密接です。脂肪組織が主なエストロゲン供給源となることから、肥満は乳がんの再発リスクを高めるといわれているため、肥満にならないよう注意が必要です。特に閉経後の女性においては、適度な運動が乳がん発生リスクや再発リスクを低減させると考えられています。