乳がんのエコー(超音波)検査について|特徴やマンモグラフィとの違いを解説
乳がんのエコー(超音波)検査とは、どのような検査なのでしょうか?乳がんの検査といえばマンモグラフィ検査を思い浮かべる方が多いと思いますが、それぞれにメリット・デメリットがあります。
本記事では、乳がんのエコー検査の特徴やマンモグラフィ検査との違い、その他の検査について解説します。乳がん検診や早期発見のポイントにも触れていますので、参考にしてみてください。
目次
乳がんのエコー(超音波)検査とは?
エコー検査は超音波検査とも呼ばれ、超音波を発生させるプロープという探触子を身体の表面に当て、跳ね返ってくる超音波を画像にする検査です。
乳がんの検査においては、病変の有無自体を調べたり、しこりの大きさや性質・状態、乳房周辺のリンパ節への転移有無を調べたりします。画像では、乳腺は白く、ほとんどの乳がんが黒く写ります。
近年では、乳腺のしこりの血流や、しこりの硬さを調べられる最新の超音波診断装置が用いられることもあります。
検査時間は10分前後。基本的に痛みはなく、放射線被ばくもないため、妊娠中でも可能な検査です。
乳がんのエコー検査とマンモグラフィ検査の違い
乳がんの検査としては、マンモグラフィ検査が広く知られていますが、エコー検査とマンモグラフィ検査の違いについて、メリット・デメリットを解説します。
メリット | デメリット | |
エコー検査 | ・高濃度乳房※1の乳がんが見つかりやすい場合がある ・小さな病変を見つけやすい ・しこりの境目や形から性質、状態を判断しやすい ・放射線被ばくがない ・基本的に痛みがない |
・良性のしこりと悪性腫瘍の見分けがつきにくい ・石灰化※2したがんが写りにくい ・検査技師の技術が問われる |
マンモグラフィ検査 | ・乳がんの死亡率減少効果が認められている検査 ・小さな病変や微細な石灰化※2も見つけやすい |
・痛みを伴う可能性がある ・高濃度乳房※1の場合、病変が見つかりにくいことがある ・被ばくは少ないが、妊娠中や授乳期の場合は検査ができないことがある |
※1高濃度乳房:乳腺の密度が濃い状態。マンモグラフィでは白い部分が多くなる。40歳未満に多い。
※2石灰化:乳房の一部にカルシウムが沈着したもの。マンモグラフィでは白い砂粒のように写る。
このように、エコー検査とマンモグラフィ検査には、得意分野やメリット・デメリットがそれぞれにあります。個々の患者の症状や状態により適した検査も異なるため、医師に相談しながら検査を受けることを推奨します。
気になる症状がある方や、乳がんの検査について詳しくお知りになりたい方は、こちらからお電話ください。
乳がんのその他の検査
乳がんの性質や乳がんかどうかを判定するためには、エコー検査やマンモグラフィ検査以外の検査も併用されるケースがほとんどです。主な検査について解説します。
視触診
乳がんの代表的な症状がしこりであることや、見た目で分かる症状もあるため、視診や触診が行われます。視診では、乳房の変形や乳頭の分泌物・湿疹などを観察します。触診では、しこりの大きさや硬さ、場所、首やわきの下のリンパ節の腫れなどを調べます。
MRI/CT/骨シンチグラフィ/PET
エコー検査やマンモグラフィ以外の画像検査としては、MRI・CT・骨シンチグラフィ・PETなどの検査が行われることがあります。
MRIでは、エコー検査やマンモグラフィ検査で確定診断できなかった小さな病変や、がんの確定診断後の広がりなどを確認します。
CTやPET検査は、主に他臓器などへの遠隔転移を調べます。骨シンチグラフィは、乳がんは骨に転移しやすいとされているため、骨転移を調べるのに用いられます。
病理検査
病理検査には、細胞診と組織診があり、いずれも画像を確認しながら病変の一部を採取して顕微鏡で調べる検査です。
細胞診は、乳房に細い針を刺し、注射器で細胞を吸い取ります(穿刺吸引細胞診)。組織診は、局所麻酔を用い、少し太めの針で組織を採取する「針生検」が行われるのが一般的です。
画像検査等で腋窩リンパ節への転移がはっきりしない場合、手術中に「センチネルリンパ節生検」を行うケースもあります。
乳がん検診について
厚生労働省は、がんによる死亡率減少を目的とし、がん検診の指針を定めています。指針で定めている検診は、乳がんのほか、胃がん・肺がん・大腸がん・子宮頸がんです。
乳がんの場合、40歳以上の女性を対象に2年に1回の検診受診が推奨されており、ほとんどの自治体で無償または一部自己負担で受けられます。
検診の方法は、国際基準でもあるマンモグラフィ検査(乳房X線検査)が基本とされ、視触診は推奨されていません。近年は、マンモグラフィ検査とエコー検査を組み合わせて行うケースもあります。
検診で「要精密検査」となった場合、必ず精密検査を受けましょう。
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乳がんの早期発見のポイント
乳がんのステージ1のネット・サバイバル(がんのみが死因となる状況を仮定した生存率の計算方法)は、98.9%となっており、早期発見できれば治癒する可能性が高いといえます。
ここでは、早期発見のポイントを、「検診受診」「ブレスト・アウェアネス」「遺伝子検査」の3つの観点から解説します。
出典:乳がん 2014-2015年5年生存率|国立研究開発法人 国立がん研究センター
乳がん検診の受診
乳がん検診の詳細については先述のとおりです。
2019年の調査では、日本で乳がん検診を受けている人は50%に満たないという結果が明らかになっています。諸外国では50~80%前後が検診を受けており、比較すると日本は受診率が低い傾向にあります。
がん検診は無症状の人を対象に行われていることもあり、早期発見できる可能性が高いといえるでしょう。
ブレスト・アウェアネス
近年は、日ごろから自分の乳房の状態に関心をもつ「ブレスト・アウェアネス」という考え方が提唱されています。
ブレスト・アウェアネスの考え方は、以下のとおりです。
- ①自分の乳房の状態を知るために,日頃から自分の乳房を,見て,触って,感じる(乳房のセルフチェック)
- ②気をつけなければいけない乳房の変化を知る(しこりや血性の乳頭分泌など)
- ③上記②の乳房の変化を自覚したら,なるべく早く医療機関を受診する
- ④40歳になったら定期的に乳がん検診を受ける
関連ページ:
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また、乳がん患者の約5%はAYA世代(AYA:Adolescent and Young Adult、思春期・若年成人)といわれています。一般的にAYA世代は15~39歳とされていますが、乳がん検診の対象者は40歳以上のため、無症状で検査を受ける機会が少ない年齢層です。
その点においても、ブレスト・アウェアネスの考え方は大切だといえるでしょう。
遺伝子検査
乳がんの5~10%は遺伝性であるとされています。とくに、AYA世代の乳がんは、遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)の原因遺伝子を持っているケースが、ほかの年代よりも多いことがわかっています。
遺伝性乳がん卵巣がんについては、BRCA1またはBRCA2遺伝子に変異があるかどうかが判断基準となります。BRCA1/2遺伝子検査は、がんと診断されたことがない場合は健康保険適用外ですが、がんと診断された場合は一定の条件を満たせば保険適用となります。
また、がんの超早期発見、予防、再発防止などが期待できる遺伝子検査もあります。このような遺伝子検査を受けることにより、がんに対するリスクを知ることができ、早期発見にも役立つと考えられます。
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