乳がんの原因とは?予防や早期発見の可能性についても解説
遺伝の可能性もあるとされる乳がんですが、乳がんの原因にはどのようなものがあるのでしょうか。
本記事では、乳がんの発生原因とされるリスク因子や遺伝性などについて解説します。記事末では予防や早期発見のための対策についても触れていますので、参考にしてみてください。
目次
乳がんとは
乳がんは、乳腺の組織にできるがんです。ほとんどのケースが乳管から発生し、男性でも罹患します。また、乳腺小葉や乳腺以外の組織から発生する乳がんもあります。進行してくると、乳房のまわりのリンパ節や離れた臓器(骨や肺など)にも転移する可能性があります。
乳がんの種類は、がん細胞が乳管や乳腺小葉にとどまる「非浸潤がん」と、乳管や乳腺小葉の周囲にも広がる「浸潤がん」に分けられます。浸潤がんのなかでも、「浸潤性乳管がん」がもっとも多いタイプです。その他、粘液がん、腺様嚢胞がんなどの特殊型がんや、炎症性乳がんなどがあります。
また、乳がんは、「ルミナルA型」「ルミナルB型」「HER2型」いずれの型にも当てはまらない「トリプルネガティブ」の4つのサブタイプというものが解明されています。サブタイプごとに治療方針が確立されていることもあり、「トリプルネガティブ」以外は、5年生存率も近年大幅に改善しています。
乳がんの原因
ここでは、乳がん発生の原因と考えられるリスク因子や遺伝性などについて解説します。
乳がんの発生
そもそもがん細胞は、正常な細胞の遺伝子が何らかの原因によって傷ついたり、変異したりすることで発生すると考えられています。遺伝子の突然変異の原因としては、喫煙、加齢が関係しているといわれ、がん発生の部位によってピロリ菌(胃がん)、日光(皮膚がん)なども挙げられます。また、がんの発生要因は免疫機能の低下とも関係があるとされています。
乳がんの発生には、エストロゲンなどの女性ホルモン、食生活、生活習慣など、いくつか原因と考えられているものがあります(詳細は後述します)。ただし、女性ホルモンの分泌や食生活などは個人差が大きく、乳がん発生との関連性については現在も研究が続けられています。
関連ページ:がん細胞とは?発生や突然変異のメカニズムについて解説
乳がんのリスク因子
乳がんのリスク因子といわれているものは、以下のとおりです。
- ・親や姉妹など、家族に乳がんになった人がいる
- ・初潮年齢が早い
- ・出産経験がない
- ・初産年齢が遅い
- ・閉経年齢が遅い
- ・閉経後の肥満
- ・女性ホルモンを含む経口避妊薬の服用
- ・閉経後の長期にわたるホルモン補充療法
- ・糖尿病患者
- ・飲酒
- ・喫煙 など
反対に、乳がん発症のリスクが低くなる可能性があるものとして、大豆食品やイソフラボンの摂取、乳製品の摂取などがあります。大豆イソフラボンは女性ホルモンに似た構造をしていますが、一方で乳がん治療薬の「タモキシフェン」とも構造が似ているため、乳がん予防の効果が期待されています(ただし、健康食品やサプリメントではなく大豆食品で摂取することが推奨されています)。
乳製品の摂取による乳がん発症リスクの低下については、近年の研究により明らかになってきたもので、詳細は現在研究が進められている段階です。
乳がんと女性ホルモンの関係
その他、乳がんは女性ホルモンとの関係も密接です。
乳がん細胞のなかに、女性ホルモン(エストロゲンやプロゲステロン)への受容体を持っているものがあります。「ホルモン受容体陽性乳がん」というタイプのがんは、女性ホルモンからの命令を受けて増殖します。
また、脂肪組織が主なエストロゲン供給源となることから、肥満は高リスクという研究結果があります。特に閉経後の肥満については高リスクと考えられており、運動によりリスクが減少する可能性があります。
乳がんの遺伝性
乳がんの約10%が遺伝性乳がんといわれています。遺伝性乳がんのうち50%以上が「HBOC(遺伝性乳がん卵巣がん症候群)」であり、将来的に卵巣がんを発症するリスクも高いことが明らかになっています。
乳がんと診断された場合、一定の条件を満たせば、特定の医療機関においてBRCA遺伝学的検査とカウンセリングが保険適用になる場合があります。保険適用の要件は以下のとおりです。(※2~8についてはいずれかを満たしていればよい)
- すでに乳がんや卵巣がんと診断され治療されている方、あるいはこれから治療を受けられる方
- 45 歳以下で乳がんと診断された方
- 複数回乳がんと診断された方(同じ側の乳房、または両側の乳房が含まれます)
- 60 歳以下でトリプルネガティブ(※)乳がんと診断された方(※女性ホルモンとがん遺伝子 HER2 に対する薬物療法が効かない乳がん)
- 卵巣がん、卵管がんや腹膜がんと診断された方
- 血縁関係にある方に乳がんや卵巣がんの家族歴を持つ方(姉妹や兄弟、子供、両親、祖父母とその姉妹と兄弟、従姉妹、従兄弟まで含まれます)
- 血縁関係にある方に BRCA1 または BRCA2 遺伝子に変異があると知らされている方
- 本人や血縁関係にある方が男性乳がんと診断された方
- HBOC について遺伝カウンセリング、BRCA 遺伝子検査を受けて BRCA1 または 2 の遺伝子に変異が認められた方
引用元:遺伝性乳がん卵巣がん症候群の保険診療収載に伴う遺伝カウンセリング・BRCA 遺伝学的検査とリスク低減乳房切除術・乳房再建術、リスク低減卵管卵巣摘出術について|一般社団法人 日本乳癌学会
遺伝性乳がんについて詳しくお知りになりたい方は、こちらからお電話ください。
乳がんの検査
乳がんの確定やステージの決定のため行う検査について解説します。
乳がんの検査で最も一般的なものが「マンモグラフィ検査」です。小さな病変や微細な石灰化を見つけることができるため、早期発見に役立ちます。「エコー(超音波)検査」は、病変の有無やしこりのサイズの大きさ・状態、周囲のリンパ節への転移などを調べる検査です。放射線被ばくがないため、妊娠中でも検査可能です。「CT」や「MRI」では、身体全体を撮影し、病変の広がりや遠隔転移などを調べます。
近年「DWIBS(ドゥイブス)」という検査方法も普及してきています。無痛MRI検査とも呼ばれ、痛みを伴わず、衣服を着たままで気軽に受診できるメリットがあります。また、日本人によく見られる高濃度乳房の検査にも適しています。
視触診もありますが、マンモグラフィ検査とエコー検査を併用することによりがんを見つけられるケースが多く、視触診のみでがんを見つけられるケースが少ないことから、視触診は必要ないという考え方もあります。
その他、健康保険適用外ですが、「乳房専用PET検査」があります。マンモPETとも呼ばれ、放射性試薬を注射し、うつ伏せの状態でホール状の検出器に乳房を入れて検査します。痛みを感じにくく短時間で済むため、身体への負担が少ないのが特徴です。
乳がんの予防や早期発見を目指すために
乳がんの5年生存率は、ステージIIIまでは80%以上ありますが、ステージIVになると30%台まで低下するため、早期発見が重要です。乳がんの予防や早期発見には、乳がん検診やセルフチェックが有効ですので、それぞれについて解説します。
乳がん検診
乳がんの早期発見には乳がん検診が有効ですが、日本は欧米に比べて検診の受診率が低いことが問題視されています。乳がん検診は、厚生労働省が「科学的根拠に基づくがん検診」として、40歳以上の女性は2年に1度受診することが推奨されています。
乳がん検診の方法は、マンモグラフィ単独法が推奨されており、検診で異常があった場合は精密検査を受けることになります。
セルフチェック
乳がんはしこりなどの初期症状がみられるため、セルフチェックで異常を発見できる可能性があります。セルフチェックでは、しこりの有無、乳房が左右対称か、ただれの有無、えくぼの有無、分泌物の有無などを調べることができます。
月経がはじまってから1週間後くらいが適しているため、月に1度、日を決めて行うとよいでしょう。