乳がんに痛みはある?痛みを伴う乳がんの症状や乳がん以外の痛みについても解説
胸の付近が痛むと心配になるのが乳がん。果たして乳がんには痛みがあるのでしょうか。
本記事では、痛みを伴う乳がんの症状や、胸の付近の痛みを伴うその他の病気などについて解説します。セルフチェックなど、乳がんの早期発見のポイントについても触れていますので、参考にしてみてください。
目次
乳がんの症状について
乳がんは早期の段階では痛みはほとんどありません。初期症状としては、乳房のしこりや左右差、乳頭の分泌物やただれなどが代表的なものです。
乳がんが進行したり末期になってくると、がん細胞そのものの増殖や潰瘍の発生から痛みを伴うことがあります。また、手術や治療後に疼痛やリンパ浮腫が起こるケースや、周辺のリンパ節や骨への転移で痛みが出ることもあります。
乳がんにおける痛みの種類と症状
ここでは、まず乳がんにおける痛みについて解説します。乳がん以外でも痛みが発生する場合がありますが、詳細は後述します。
乳房の痛み
乳房の痛みには「周期性」のものと「非周期性」のものがあります。
「周期性」の痛みは、月経にともなうホルモンの変化が主なものです。ただし、周期的に強い痛みがある場合は乳がんの発症や増殖に関わる危険因子のひとつとされ、乳がんのリスクを高めることが明らかになっています。
「非周期性」の痛みは、閉経後に出るケースが多いです。ホルモン変化や血糖値の異常、帯状疱疹などが原因で発生することがあります。ホルモンの変化が原因の「非周期性」の痛みは、乳がんの発生と関連があると考えられています。
また、炎症性乳がんの場合、皮膚のびまん性発赤や浮腫などとともに痛みを伴うことがあります。
腋窩(わきの下)や胸壁などの痛み
乳がんがリンパ節などに転移すると、わきの下や胸壁などに痛みが発生することがあります。わきの下にはしこりや腫れがみられることもあり、乳がん以外では悪性リンパ腫などでも起こることがあります。
骨などの痛み
乳がんの転移のうち、約30%は最初に骨転移がみられます。転移しやすい場所としては、腰椎、胸椎、頸椎、骨盤、肋骨などが挙げられます。転移の場所に応じて、腰痛や背中の痛み、股関節の痛み、腕の痛みなどが起こることもあります。また、骨ではありませんが、手術後の後遺症として、リンパ浮腫や傷の痛みなどが現れる場合もあります。
関節痛やこわばり
乳がんの治療には、ホルモン剤の投与による「ホルモン療法」が用いられる場合があります。このホルモン剤には、血液中のエストロゲン濃度を低下させる副作用が出るものがあり、これにより関節痛を引き起こすと考えられています。
また、化学療法で用いられる抗がん剤にも、関節痛や筋肉痛を引き起こすものがあります。
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乳がん以外の痛みについて
冒頭で述べたように、初期の段階の乳がんでは痛みが出ることは稀です。進行していても痛みが出る場合、出ない場合と症状はさまざまです。乳房やその周辺の痛みは乳がん以外の可能性も高いため、その点について補足します。
乳腺症
乳房の痛みの原因として代表的なものは、乳腺症。乳腺のしこりや乳頭分泌などを伴う良性疾患です。ホルモンバランスの変化で乳腺の肥大した部位と退縮した部位が混在し、発生すると考えられています。カフェインやニコチン、脂肪などが痛みの原因と考えられているため、それらを控えることで症状緩和が期待できます。
乳腺炎
乳腺炎は大きく「急性乳腺炎」と「慢性乳腺炎」に分けられます。
急性乳腺炎は、乳管が十分に開いていないことや下着などの圧迫、授乳を十分に行えないことから母乳が溜まってしまい炎症につながるなどの「うっ滞性乳腺炎」や、うっ滞性乳腺炎が続くことにより乳頭から細菌が浸入する「化膿性乳腺炎」などがあります。急性乳腺炎では、乳房の痛みに加え、乳房全体の腫れやしこり、赤み、熱感などを伴います。
慢性乳腺炎の場合、難治性の「乳輪化腫瘍」などが考えられます。
感染症
皮膚の良性腫瘍とされる粉瘤(アテローム)感染により、乳房が赤く腫れて痛みが生じることがあります。
肩こりや肋軟骨炎
乳房そのものの痛みではありませんが、肩こりや肋軟骨炎が原因で胸の付近が痛むこともあります。
わきの下や胸の外側などが痛む場合、肩こりや肋間神経の圧迫が原因であることが多いです。この場合、鋭い痛みが走ったあと、しばらく痛みが続くことが特徴です。肋軟骨炎は、内側の肋骨と軟骨の継ぎ目が痛くなります。軟骨の弾力性がなくなってくるためと考えられ、40代以上の女性に多い症状です。
乳がんの痛みとの向き合い方
乳がんの痛みは、転移による痛みなど、進行に伴うものが多いと考えられます。また、手術や薬物療法でも痛みを伴うことがあるのも、先述のとおりです。
関節痛は定期的な軽い運動が、筋肉痛は入浴やマッサージなどで血行を良くすることが効果的です。また、手術後のリンパ浮腫の予防には、スキンケアが効果的とされています。ただし、個々の患者の症状により適した対処方法が異なるため、主治医に相談することを推奨します。
乳がんの早期発見のために
早期の乳がんは痛みを伴うケースが少ないため、痛みが出ない段階で発見することが重要です。また、乳房やその周辺の痛みを伴う疾患は乳がん以外にもありますが、乳がんが隠れている可能性もあるので注意が必要です。セルフチェックや定期的な乳がん検診の受診などが早期発見に役立つと考えられますので、ご紹介します。
セルフチェック
乳がんの初期症状の代表的なものはしこりです。セルフチェックでは、しこりや左右非対称、分泌物などの異常を発見できる可能性がありますので、習慣化するのがおすすめです。タイミングとしては、月経がはじまってから1週間後くらい、乳房の張りが落ち着く頃に行うとよいでしょう。
また、近年は日ごろの乳房の状態を意識したり知ったりすることに重点を置く、「ブレスト・アウェアネス」という考え方も提唱されています。
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乳がん検診
乳がん検診は、国が推奨する検診のひとつです。40歳以上の女性を対象に、2年に一度受診することが推奨されています。
遺伝子検査
乳がんのなかには、遺伝性のものもあります。乳がんや卵巣がんと診断された場合、一定の条件を満たせば、保険適用でBRCA遺伝学的検査とカウンセリングを受けられます。
その他、保険適用外ではありますが、がんの超早期発見やがんにかかりやすいかどうかを調べる遺伝子検査もあります。
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