がんの原因に迫る|さまざまな要因と予防についても解説
日本人の2人に1人がかかるとされている「がん」。その原因とは一体何なのでしょうか。予防できるものなら予防したい、とお考えになる方は多いと思いますので、本記事ではがんの原因について解説します。科学的根拠に基づく予防法についても触れていますので、参考にしてみてください。
目次
がんの原因についての概要
がんの原因はひとつではなく、さまざまな要因が関連して発生すると考えられています。その要因には、生活習慣等の環境的要因や遺伝的要因などがあります。
日本における研究結果では、男性で約55%、女性で約30%のがんが、予防可能なリスク要因によって発生していることが明らかになっています。
日本人を対象とした研究結果をもとに、国内では科学的根拠に根ざしたガイドライン「日本人のためのがん予防法(5+1)」が提唱されています。
がん発生のメカニズム
がんが発生するメカニズムは、細胞分裂の際のコピーミスといわれています。
人間の身体は約60兆個の細胞でできており、健康な人でも、1日に5,000個くらいはコピーミスが起きているとされています。
通常はコピーミスで発生した異常細胞は、免疫細胞が攻撃して死滅しますが、それを免れた細胞が「がん細胞」となり、10~20年かけて「がん」になります。
関連ページ:がん細胞とは?発生や突然変異のメカニズムについて解説
がんの原因①生活習慣
ここからは、がんの原因について「生活習慣」「感染」「環境要因」などのカテゴリに分けて解説します。
生活習慣に関わる原因の主なものは「喫煙」です。その他、食習慣や運動なども関係しています。
喫煙
喫煙は、がんの原因としてもっとも大きなものと考えられています。
男性のがんの約24%、女性のがんの約5%は喫煙(受動喫煙も含む)が原因、という日本国内の研究結果があります。
たばこの煙には約70種の発がん性物質が含まれていて、副流煙はその数倍といわれており、受動喫煙が与える影響も大きいとされています。
喫煙がリスク要因とされるがんは、口腔がん・咽頭がん・食道がん・胃がんなどが挙げられます。
出典:日本人におけるがんの要因|国立がん研究センター がん情報サービス
飲酒
飲酒は、生活習慣に関わるがんの原因として、喫煙に次いで割合が大きいものです。
飲酒ががんの原因となる要因は、
- ・体内に取り込まれたエタノールが発がん性物質のアセトアルデヒドとして代謝されること
- ・免疫機能を抑制すること
- ・エストロゲンの代謝に影響を及ぼすこと
などとされています。
また、飲酒と喫煙の相互作用も大きいと考えられています。
飲酒がリスク要因とされるがんは、口腔がん・咽頭がん・食道がん・結腸/直腸がんなどが挙げられます。
食習慣
食べ物や栄養素においては、赤身肉や加工肉が大腸がんのリスクを高める要因として確実視されています。
また、塩蔵食品(塩漬けされた食品)は、胃がんのリスクを高める可能性が高いと指摘されています。理由は、濃度の高い塩分が胃粘膜に影響を与えることや、亜硝酸やニトロソ化合物などの発がん性物質を含むことなどが考えられます。
その他、βカロテンサプリメントの過剰摂取や飲料水中のヒ素が、肺がんのリスクを高める要因として確実といわれています。
体格
体格についても、がんのリスクが上がるという研究結果があります。
肥満や過体重は、食道がん・膵臓がん・大腸がん(結腸がん)・閉経後の乳がん・子宮体がんなどのリスクが高まるといわれています。
肥満に伴ってインスリンの働きが悪くなり、細胞の増殖を促進する「インスリン様増殖因子」が増加し、結腸がんのリスクを高めると考えられています。また、脂肪組織内のエストロゲンの産生により、閉経後の乳がんや子宮体がんのリスクが上がるとされています。
肥満だけではなく、やせすぎの場合でも、栄養不足による免疫機能の低下、抗酸化物質の不足などにより、がんのリスクが上がることが推察されています(特にアジア人を対象とした研究)。
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がんの原因②感染
ウイルス等による感染は、日本人のがんの原因のうち喫煙に次いで多く、20%前後とされています。
特に多いのは、C型肝炎ウイルスとヘリコバクター・ピロリ。B型・C型肝炎ウイルスは肝臓がん、ヘリコバクター・ピロリは胃がんの原因として知られています。
その他、ヒトパピローマウイルス(HPV)は子宮頸がん・陰茎がん・中咽頭がんなど、エプスタインバーウイルス(EBV)は上咽頭がんや悪性リンパ腫などの原因とされています。
がんの発生とウイルスの関係は、以下のとおりです。
原因となるウイルス・細菌 がんの種類 ヘリコバクター・ピロリ(H.pylori) 胃がん B型・C型肝炎ウイルス(HBV、HCV) 肝臓がん ヒトパピローマウイルス(HPV) 子宮頸がん、陰茎がん、外陰部がん、膣がん、肛門がん、口腔がん、中咽頭がん エプスタイン・バーウイルス(EBV) 上咽頭がん、バーキットリンパ腫、ホジキンリンパ腫 ヒトT細胞白血病ウイルスI型(HTLV-1) 成人T細胞白血病/リンパ腫
がんの原因③環境要因(化学物質への曝露など)
特定の職業などで化学物質を扱う場合、発がんリスクが高くなることがあります。
国際がん研究機関で発がん性があると分類された化学物質や職業は、約120種類。物質にもよりますが、吸引による曝露では肺・鼻腔・咽頭などのがんに影響し、その他、接触による曝露では皮膚、排出される尿路にも影響を及ぼすとされています。
がんの原因④生殖要因やホルモン
ホルモンとがん発生の関係も密接です。
エストロゲンやプロゲステロンに代表される性ステロイドホルモンは、がん発生のリスクを高めると考えられています。がんのリスクを高めるホルモン剤やホルモン療法のうち、主なものは以下のとおりです。
- ・エストロゲン療法:閉経後の子宮体がんや卵巣がん、乳がんのリスクを高める
- ・エストロゲン、プロゲストーゲン合剤の経口避妊薬:肝がん、乳がん、子宮頸がんのリスクを高める
- ・エストロゲン、プロゲストーゲン合剤療法:閉経後の子宮体がんや乳がんのリスクを高める
- ・抗エストロゲン薬として乳がんの治療に用いられるタモキシフェン:子宮体がんのリスクを高める
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がんの原因⑤遺伝的要因
がんには、遺伝的な体質がかかわる「遺伝性腫瘍」というものがあります。
遺伝性腫瘍は、若いうちにがんに罹ったり、がんの再発を繰り返したり、家系のなかで同じがんを発症する人が多い、などの特徴があります。「遺伝性乳がん卵巣がん」「家族性大腸腺腫症」「リンチ症候群」などが典型例です。
がん患者の5~10%程度は、生まれつきがん遺伝子やがん抑制遺伝子に変異があり、親から子へ遺伝することがあります。
関連ページ:がんは遺伝する?遺伝するがんや遺伝子検査などについて解説
がんの予防・早期発見
最後に、がんの予防について解説します。
がんの予防は、日本人を対象とした研究結果に基づく、科学的根拠に基づいた「日本人のためのがん予防法(5+1)」が提唱されています。
ガイドラインでは、「禁煙」「節酒」「食生活」「身体活動」「適正体重の維持」の改善可能な生活習慣+「感染」についての予防法が定められています。
出典:科学的根拠に基づくがん予防|国立がん研究センター がん情報サービス
また、がんの早期発見のポイントは、定期的な検診を受けることです。
国が推奨している「肺がん」「胃がん」「大腸がん」「乳がん」「子宮頸がん」の検診は、ほとんどの自治体で無償または一部の自己負担で受診できます。
その他、家族の複数人ががんに罹ったなど、遺伝的要因に不安がある場合は、遺伝子検査という選択肢もあります。一定の条件に当てはまれば保険適用の検査が受けられますが、有償の検査であればだれでも受けられます。
有償の遺伝子検査では、がんにかかりやすいかどうかや、がんの超早期発見などが期待できます。
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遺伝子検査|GENEクリニック
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