大腸がんの末期症状とは?検査方法や術後の療養・生存率について
大腸がんは、日本で最も罹患数の多いがんといわれています。本記事では、大腸がんの末期症状はどのようなものなのか、その具体的な症状や検査方法について解説します。また、大腸がんの治療中や手術後の療養についても解説しますので、参考にしてみてください。
目次
大腸がんの末期症状とは
まずは大腸がんの基礎知識について解説します。また、末期とはどのような状態を指すのか、末期における症状についても解説します。
大腸がんとは
大腸がんとは、大腸(直腸や結腸)に発生するがんです。良性のポリープががん化するケースと、粘膜から直接発生するケースがあります。粘膜に発生したがんは、大腸の壁のリンパ液や血液に乗って、他臓器などに転移することがあります。日本人の大腸がんは、大腸下部のS状結腸や直腸にできやすいといわれています。
2018年の統計では年間で15万人以上が罹患し、男性・女性を合計すると日本でもっとも罹患数の多いがんでした。
大腸がんの末期とは
大腸がんのステージは0期~IV期とされています。IV期と診断された場合、末期と思いがちですが、必ずしもそうとはいえません。厚生労働省によると、末期がんは「治癒を目指した治療に反応せず、進行性かつ治癒困難又は治癒不要と考えられる状態と医師が総合的に判断した場合」と定義しています。
引用:特定疾病における「がん末期」の取扱い等について|厚生労働省
大腸がんの末期症状
大腸がんは、早期では自覚症状が出にくいがんといわれています。進行すると、血便・腹痛・下痢・便秘などの症状が現れます。末期になると、腸管からの出血とそれに伴う貧血・腹膜播種・腸閉塞・他臓器への転移を引き起こすことがあります。
早期の症状が出にくいことから、肺や肝臓などに転移したがんが先に見つかることもあるようです。
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大腸がんの検査方法
ここでは、大腸がんの検査方法について解説します。
はじめは便のなかの血液混入を調べる「便潜血検査」を行うケースが多いです。その後「大腸内視鏡検査」や「注腸造影検査」、「直腸診」「CT検査・MRI検査」などを行います。それぞれの検査について、詳しくみていきましょう。
大腸がんの検査方法|大腸内視鏡検査
「大腸内視鏡検査」は肛門から内視鏡を挿入して、モニターで大腸の内部を調べる方法です。ポリープや小さな腫瘍の場合は、そのまま切除することもできます。病変が見つかった場合は、採取して病理診断を行います。
大腸がんの検査方法|注腸造影検査
「注腸造影検査」は肛門からバリウム(造影剤)と空気を注入し、X線写真を撮る方法です。大腸全体を撮影し、がんの正確な位置、大きさなどを調べます。近年は「注腸造影検査」の代わりに、身体への負担が少ないといわれている「CTコロノグラフィ検査(大腸3D-CT検査)」を用いることもあります。
大腸がんの検査方法|直腸診
「直腸診」は肛門から直腸内に指を挿し込んで、異常の有無を調べる方法です。
大腸がんの検査方法|CT検査・MRI検査
「CT検査・MRI検査」は、X線や磁器を使用して身体の内部を描き出す検査方法です。周辺臓器への転移などがないかを調べます。
大腸がんのステージ
がんの進行度を示すステージは、大腸がんの場合0期~IV期の5段階です。「大腸癌研究会」が示すガイドラインに沿って、大腸がんのそれぞれのステージについて解説します。
- ・0期の大腸がんは、がんが粘膜内にとどまり転移がないものとされています。
- ・I期の大腸がんは、固有筋層(筋肉の層)にとどまり転移がないもので、0期~I期が早期がんとされています。
- ・II期の大腸がんは、固有筋層(筋肉の層)の外に浸潤している状態で転移がないものとされています。粘膜下層より深く浸潤すると進行がんとなります。
- ・III期の大腸がんは、深達度に関係なく、リンパ節に転移がある状態とされています。
- ・IV期の大腸がんは、肝臓や肺などへの血行性転移または腹膜播種(腹腔にがんが散らばること)がある状態とされています。
大腸がんの療養ついて
ここでは、ご自身やご家族が大腸がん末期と診断された場合の療養について解説します。
大腸がんの治療中や手術後の療養
大腸がんの治療中や手術後の食事、外出時の対策、ストーマ(人工肛門)をつくった場合の療養などについてみてみましょう。
・食事
大腸がんの外科手術を行った場合、術後すぐは、大腸に負担をかけないよう食物繊維の多いものや消化しにくいものは避けるのが無難です。食事制限がない場合は、よく咀嚼すること、食べ過ぎないことに気をつけると良いでしょう。
薬物療法中は、副作用で食欲の低下や味覚障害が発生することがあります。水分の摂取や軽い運動が大切です。
末期の状態では食欲が落ちやすいですが、腸管の動きや消化酵素の分泌のために、できるだけ口から栄養を摂ることが重要です。どうしても食べられない場合は、点滴などで水分や栄養を摂る方法があります。
・外出
大腸がんの手術後や治療中は、下痢が続く、1日に何度もトイレに行きたくなる、などの症状がみられます。そのような場合、外出を躊躇してしまうこともあるでしょう。外出の際は、下着の中にパッドをつける、着替えを用意する、トイレの場所はあらかじめ確認するなどの対策をとっておくと安心です。
ストーマをつくった場合、多機能トイレやオストメイト対応トイレを利用すると良いでしょう。多機能トイレやオストメイト対応トイレには、シャワー、汚物入れ、着替え台などがあります。
出典:オストメイトJP
永久的なストーマをつくった場合、身体障害者認定を受けることができます。公共交通機関の割引などを受けられますので、お住まいの自治体に確認すると良いでしょう。
大腸がんの生存率や余命について
先述したように、末期がんは「治癒を目指した治療に反応せず、進行性かつ治癒困難又は治癒不要と考えられる状態と医師が総合的に判断した場合」と厚生労働省が定義しています。
がんの統計のひとつとして、「生存率」があります。「生存率」は、がんの治療成績を示す指標のひとつでもあります。がんと診断されてから、一定期間経過後に生存している割合のことを指します。
大腸がんの相対5年生存率は、ステージIでは94.5%、ステージIIでは88.4%、ステージIIIでは77.3%、ステージIVでは18.7%とされています。
出典:大腸がん 2013-2014年5年生存率|国立研究開発法人国立がん研究センター
※相対生存率とは、他の病気による死亡を除いた生存率です。また、上記はあくまで統計であり、患者ひとりひとりの余命を決定づけるものではありません。