大腸ポリープは切除すべき?大腸がんになる可能性や原因などについて解説
大腸ポリープがあると診断された場合、多くの人は「良性なら切除しなくても良いのでは?」と考えると思いますが、実際はどうなのでしょうか。
本記事では、大腸ポリープの種類やがん化する可能性、切除したほうが良いと考えられるポリープなどについて解説します。検査や予防などについても触れていますので、参考にしてみてください。
目次
大腸ポリープとは
大腸にできる隆起性の病変を「大腸ポリープ」といいます。「ポリープ」自体は病名ではなく、「皮膚・粘膜などの面から突出し、茎をもつ卵球状の腫瘤」の総称で、直腸やS状結腸にできるケースが多いです。
ポリープには、腫瘍性のものと非腫瘍性のものがありますが、大腸ポリープの場合、腫瘍性のものが多くみられます。腫瘍性のポリープは、悪性ポリープ(大腸がん)と良性ポリープ(腺腫、鋸歯状病変・SSL)に分けられ、隆起性のものだけでなく、陥没した腺腫や陥凹型のがんも含まれます。
非腫瘍性のポリープは炎症性や過形成性という種類があり、出血などの症状がみられることがあります。
出典:大腸ポリープとはどんな病気ですか?|一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
大腸ポリープががんになる可能性は?
前述のとおり、大腸ポリープは腫瘍性のものであることが多く、すでにがんになっているものやがん化するケースがあります。腫瘍性ポリープには良性ポリープもありますが、良性ポリープもがんに進展する場合があると考えられています。
腫瘍性の大腸ポリープのうち8割以上を占めるといわれている「腺腫」は、数年かけて大きくなり大腸がんに移行するケースが9割ほどとされています。
また近年、非腫瘍性のポリープのうち過形成性ポリープは、サイズが10mmを超えたり、上行結腸や横行結腸にできたりするとがんへの移行リスクが高いとされています。SSL(Sessile serrated lesion)と呼ばれる鋸歯状病変も非腫瘍性ポリープに分類されますが、これも前がん病変と認識され、がん化する可能性があるといわれています。
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大腸ポリープは切除すべき?
大腸ポリープの切除は、がん化する可能性の有無で判断されることが多いです。医師の判断によりますが、がん化する可能性がないポリープは、出血などの症状がない限り切除しないケースがほとんどです。
前述した、がん化する可能性がある「腺腫」や「SSL」は、成長したり悪化したりすることでがん化すると考えられているため、切除の対象となることが多いでしょう。
切除のタイミングについては諸説あり、一般的には「5mm以上のポリープ」が摘出の対象とされていますが、科学的根拠に乏しいという論調もあります。陥凹型や形がいびつなものなどは5mm以下で摘出されることもあり、発見したポリープはすべて摘出するという考え方もあります。切除の方法や適切なタイミングなどについては個々の患者により異なるため、医師の総合的な判断が必要です。
なお、大腸ポリープの切除により76~90%の大腸がん累積罹患率の減少がみられた、という研究結果もあります。
出典:大腸内視鏡検査後のサーベイランス間隔|日本消化器内視鏡学会雑誌
大腸ポリープの検査方法
ここでは、大腸ポリープの種別やがん化する可能性があるかどうかを調べるための検査方法について解説します。
便潜血検査
便潜血検査はいわゆる「検便」で、2日分の便を採取し、便のなかに潜む血液を調べる検査です。低コストで簡便なため広く普及しており、一般的な大腸がん検診で用いられています。
ポリープなどによる腸内の出血を調べますが、痔や腸の炎症などでも陽性判定となることがあります。また、腺腫に関しての感度はあまり高くないとされています。
大腸内視鏡検査
大腸内視鏡検査は、ポリープの発見においてもっとも精度が高いと考えられています。小さなポリープや病変、平坦ながんも発見しやすい検査です。
あらかじめ下剤を飲んで大腸内をきれいにし、肛門から大腸カメラを挿入して大腸と小腸の一部を観察します。色素を病変に散布する「色素内視鏡検査」を用いる場合もあります。
検査と同時にポリープの切除や早期のがんを切除するケースもあります。切除した場合、切除した組織を顕微鏡で観察する病理検査をし、ポリープの種類やがんの確定診断を行います。
バリウム検査
バリウム検査は大腸の精密検査として歴史がある検査で、肛門からバリウム(造影剤)を注入し、レントゲンで大腸を撮影します。
大腸全体の様子を観察することができ、内視鏡で見づらい部分も見ることができます。一方で、小さなポリープなどは発見が難しいため、現在は内視鏡検査を行えない場合の補助的な目的として行われることが多くなっています。
大腸ポリープの原因と予防について
大腸ポリープや大腸がんの原因と考えられていること、予防法について解説します。
大腸ポリープや大腸がんの原因
大腸ポリープができる原因は、遺伝子の異常が一因と考えられています。そこに、年齢や生活習慣などの外的な要因が加わることで、がんに進展しやすくなるとされています。
大腸がんのリスク因子として主なものは、以下のとおりです。
- ・50歳以上
- ・過度の飲酒や喫煙
- ・高カロリーな食生活
- ・肥満
- ・肉食傾向
- ・加工肉の摂りすぎ
- ・大腸がんの家族歴 など
遺伝性大腸がんについて
遺伝的な要因により大腸がんになりやすい体質があり、大腸に関わる病気としては「家族性大腸腺腫症(ポリポーシス)」や「リンチ症候群」というものがあります。
このうち「家族性大腸腺腫症(ポリポーシス)」は大腸にポリープが多発する疾患で、100個以上のポリープが発生することがあります。若いうちから大腸ポリープができ始め、年齢とともに増殖します。
典型例としては、10代でポリープができ始め、40代までに約半数、60代にはほぼ100%の人が大腸がんになるといわれています。
出典:家族性大腸腺腫症(FAP)どのような病気ですか?|一般社団法人 日本遺伝性腫瘍学会
関連ページ:がんは遺伝する?遺伝するがんや遺伝子検査などについて解説
大腸ポリープや大腸がんの予防
遺伝性の要因についての予防は難しいですが、前述の外的要因に対しては予防策を講じることが可能です。
たとえば、野菜や食物繊維の多い食材を摂取する、節酒・禁煙をするなど、生活習慣の見直しが有効です。肥満を防ぐために、適度な運動も良いでしょう。
また、定期的な検査も重要です。国が推奨している大腸がん検診は、無償または一部自己負担で受けられる自治体が多いです。基本は便潜血検査を行い、要精密検査となった場合は大腸内視鏡検査を行うのが一般的です。
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