肺がんの初期はどのような状態?症状や検査、早期発見のポイントを解説
肺がんの初期はどのような状態なのでしょうか。肺がんといえば「咳」をイメージする方が多いと思います。
本記事では、実際の肺がんの初期症状や状態、検査などについて解説します。予防に役立つリスク因子や早期発見のポイントについても触れていますので、参考にしてみてください。
目次
肺がんについて
肺がんは、肺や気管支の細胞ががん化するものです。肺がんは腺がん、扁平上皮がん、大細胞がん、小細胞がんの4種類に分類され、このうち腺がんが最も多く診断されています。治療方針を決めるうえでは、腺がん・扁平上皮がん・大細胞がんを「非小細胞がん」とし、「小細胞がん」と分けて扱います。
2019年の国内の年間罹患者数は約12.6万人でした。男性の部位別罹患者数のなかでは4位。2020年の肺がん死亡数は男性約5.3万人で1位、女性約2.2万人で2位と、死亡率の高いがんとして知られています。ただし、年齢調整罹患率や死亡率は、減少傾向にあります。
肺がん全体の5年生存率は34.9%とされています。
出典:
がん種別統計情報 肺|国立研究開発法人 国立がん研究センター
年次推移|国立研究開発法人 国立がん研究センター
肺がんの初期~進行してきたときの症状や状態
ここでは、肺がんの初期および進行してきたときの症状や状態について解説します。ステージの詳細は下記関連ページを参考にしてください。
関連ページ:肺がんのステージ3とは?ステージ別生存率や検診などについて解説
肺がんの初期症状
肺がんは初期症状に乏しいがんとして知られています。また、肺がん自体に特徴的な症状はありません。咳、痰、息苦しさ、発熱などの症状が出ることはありますが、風邪や肺炎、気管支炎などの一般的な呼吸器系の病気と同様の症状のため、区別がつきにくいのです。
咳が2週間以上続く場合や、痰に血が混じっている、発熱が5日以上続くなどの症状が見られる場合は注意が必要です。
肺がん初期の状態
肺がんのステージは0~4に分かれますが、おおよそステージ0~1が早期といわれます。がんの原発巣が小さく、リンパ節転移がない状態などがステージ0~1に分類されます。ステージ1の5年相対生存率は83.3%とされており、早期発見できれば治癒する可能性も見込めます。
出典:肺がん 2013-2014年5年生存率|国立研究開発法人 国立がん研究センター
肺がんが進行してきたときの症状
肺がんが進行してくると、咳や血痰などに加え、息苦しさや動悸が現れることがあります。
原発巣(がんそのもの)が原因の症状として、喘鳴、飲み込みにくさ、胸痛、嗄声、腕の痛みやしびれ、がん性胸膜炎などがあり、転移が原因の症状として、骨の痛み、頭痛、だるさ、背中・肩の痛みなどが挙げられます。
関連ページ:肺がんの咳の特徴とは?そのほかの症状や検査についても解説
肺がんが進行してきたときの状態
おおよそステージ2~4は進行状態のがんとされます。がんの原発巣は大きくなり、リンパ節転移、遠隔転移が見られる状態です。ステージ4の5年相対生存率は7.1%とされています。
出典:肺がん 2013-2014年5年生存率|国立研究開発法人 国立がん研究センター
肺がんの症状やステージについて詳しくお知りになりたい方は、こちらからお電話ください。
肺がんの検査
肺がんの検査は、胸部X線検査が基本。その他CT検査やMRI検査では、がんの広がりや転移の有無などを調べます。近年は、X線検査で写りにくい場所なども調べられる「低線量CT」という検査が普及しており、早期発見が期待できます。
生検や細胞診も行うことがあります。喀痰細胞診という、痰に混じったがん細胞を調べる検査や、肺の細胞を採取する生検などで、がんの種類や確定診断を行います。
肺がんの治療方針を決めるうえでは、上記のような検査をおこなったうえで、肺がんの種類や組織型、進行状態などを考慮します。あわせて、患者の日常生活の制限の程度を示す、PS(パフォーマンスステータス)という指標を用います。
パフォーマンスステータス(PS)
スコア | 定義 |
---|---|
0 | 全く問題なく活動できる。 発病前と同じ日常生活が制限なく行える。 |
1 | 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。 例:軽い家事、事務作業 |
2 | 歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない。 日中の50%以上はベッドの外で過ごす。 |
3 | 限られた自分の身の回りのことしかできない。 日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす。 |
4 | 全く動けない。 自分の身の回りのことは全くできない。 完全にベッドか椅子で過ごす。 |
出典:
JCOG(日本臨床腫瘍研究グループ)
Common Toxicity Criteria, Version2.0 Publish Date April 30, 1999
肺がんにかかりやすい人
肺がんのリスク因子や、かかりやすい人の特徴についても研究が進められています。予防にも役立ちますので、参考にしてみてください。
肺がんのリスク因子1:生活習慣や環境要因など
肺がんのリスク因子として代表的なものは喫煙です。非喫煙者と比べ、男性で4.4倍、女性で2.8倍かかりやすくなるといわれています。喫煙開始年齢が若く、喫煙量が多いほどリスクが高まります。また、受動喫煙も、2~3倍程度リスクが高まるとされています。
その他、大気汚染やアスベストなどの有害物質を多く吸い込んでしまう環境、女性ホルモンも関連があると考えられています。
肺がんのリスク因子2:家族歴
両親や兄弟姉妹に肺がんにかかった人がいる場合、いない場合の2倍ほど罹患リスクが高くなるという研究結果があります。家族歴と喫煙などの生活習慣の共有が合わさり、肺がんにかかりやすくなることも考えられます。
肺がんの早期発見のためにできること
先述のように、肺がんのステージ1の5年相対生存率は83.3%。肺がんを初期の状態で発見できれば、治癒する可能性も見込めます。できるだけ早期発見するために、肺がん検診や遺伝子検査を紹介します。
肺がん検診
肺がん検診は、国が推奨するがん検診のひとつです。40歳以上の人を対象に、ほとんどの自治体で無償または一部自己負担で受診できます。基本的な検査方法は、胸部X線検査で、喫煙量の多い人は喀痰細胞診も用いられることがあります。
遺伝子検査
肺がんにかかわる遺伝子に異常がないか調べる検査で、胸水や生検で採取した組織を調べます。医師が必要と判断した場合には、保険診療になることもあります。非小細胞肺がんでは「EGFR遺伝子」「ALK遺伝子」「ROS1遺伝子」「BRAF遺伝子」「MET遺伝子」「RET遺伝子」「KRAS遺伝子」「NTRK遺伝子」などの異常を検査します。