膵臓がんの末期症状と検査方法、5年生存率について
早期発見が難しいといわれている膵臓がん。その末期症状はどのようなものなのでしょうか。本記事では膵臓がんの末期症状、がんの状態を知るための検査方法やステージ、5年生存率などについて解説します。また、家族が膵臓がん末期と診断されたときの対処方法についても解説しますので、参考にしてみてください。
目次
膵臓がんが進行してきたとき~末期症状
日本膵臓学会誌第23巻第2号によると、膵臓がんが無症状で発見されるのは15%程度とされています。ここでは、膵臓がんが進行してきたとき~末期に出やすい症状について解説します。
膵臓がんが進行してきたときに出やすい症状は、上腹部痛、背部痛、黄疸、お腹のしこり、食欲不振、腹部膨満感などです。末期症状として出やすいものは、体重減少、糖尿病の併発・悪化、背部痛、黄疸などがあります。また、糖尿病の急な発症や悪化から、膵臓がんを発見するケースもあります。
膵臓がんの末期症状では、体重減少が特徴的です。がんの進行に伴う消化酵素の分泌減少や、十二指腸などへの浸潤がその原因とされています。
がんができた場所によっても、症状に特徴があります。膵頭部上部にできた場合は黄疸が出やすく、膵頭部中央では黄疸・腹痛、膵頭部下部では腹痛が出やすいことが特徴です。
膵臓がんの検査
ここでは、膵臓がんの検査方法について解説します。
血液検査・腫瘍マーカー検査
血液検査と腫瘍マーカー検査は、膵臓がんが疑われる場合の初期段階で行われることが多い検査です。血液中の膵酵素やがん細胞に関係する数値を調べます。(ただし、あくまでがんがあっても数値が増加しない場合や、ほかの病気で数値が増加することもあります。)
超音波(エコー検査)・CT検査
血液検査・腫瘍マーカー検査でがんの疑いがある場合、次に用いられる検査として、超音波検査やCT検査があります。超音波検査では、がんの位置や形・状態、周辺の血流などを調べ、CT検査ではがんの存在確認や広がり、他臓器への転移などを調べます。
MRI検査
MRI検査では、がんの広がりや他臓器への転移を確認します。身体のさまざまな方向の断面図を撮影する検査方法です。
膵臓がんの検査においては、「MR胆管膵管撮影(MRCP)」という手法が用いられることがあります。MRI撮影後のデータを使い、胆道・膵管の画像を描出する方法です。胆道や膵管の異常を捉えやすいため、早期発見につながる検査方法として注目されています。また、造影剤を使用しないため、身体への負担が少ないことも特徴のひとつです。
内視鏡検査
内視鏡検査では、内視鏡を口から入れて病変を確認します。そのまま腫瘍の細胞を採取し、生検を行うこともあります。
内視鏡検査には、内視鏡の先端に超音波プロープをつける「超音波内視鏡検査(EUS)」、内視鏡とX線撮影を組み合わせた「内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)」などの方法もあります。
その他の検査
その他の検査方法としては、「PET検査」や「経皮経肝胆道造影検査」などもあります。
「PET検査」では、放射線に反応するブドウ糖を注射し、がん細胞に集まるブドウ糖の分布を調べます。CT検査やMRI検査などでははっきりしない、他臓器への転移などを確認するために用いられます。
「経皮経肝胆道造影検査」は、カテーテルを用いて肝内胆管末梢部などに造影剤を注入し、X線撮影を行う検査です。カテーテルを利用して、黄疸の治療に用いられることもあります。
膵臓がんの検査について詳しくお知りになりたい方は、こちらからお電話ください。
膵臓がんのステージと5年生存率
膵臓がんのステージは0期~IV期に分類されます。ここでは、各ステージの状態とステージ別の5年生存率について解説します。(生存率はあくまで統計であり、患者ひとりひとりの余命を決定づけるものではありません。)
ステージ0期~I期
膵臓がんのステージ0期は早期で、がんが膵管の上皮内にとどまっている状態です。ステージI期は、IA期とIB期の2つに分類されます。
IA期:がんの大きさが2cm以下で膵臓内に限局している、かつリンパ節への転移なし
IB期:がんの大きさが2cmを超えているが膵臓内に限局している、かつリンパ節への転移なし
5年生存率は49.5%~54.1%とされています。
ステージII期
膵臓がんのステージII期も、IIA期とIIB期の2つに分類されます。
IIA期:がんが膵臓外に進展しているが、腹腔動脈や上腸間膜動脈に及ばない、かつリンパ節への転移なし
IIB期:がんが膵臓外に進展しているが、腹腔動脈や上腸間膜動脈に及ばない、かつリンパ節への転移あり
5年生存率は21.9%~23.8%とされています。
ステージIII期
膵臓がんのステージIII期は、がんが腹腔動脈もしくは上腸間膜動脈へ及ぶ状態です。
5年生存率は6.0%~7.7%とされています。
ステージIV期
膵臓がんのステージIV期は、他臓器などへの転移がある状態です。
5年生存率は1.2%~1.6%とされています。これは、膵臓がんの早期発見が難しいことや、早期の段階で転移や浸潤を起こしやすいことが起因しているといえるでしょう。
※5年生存率は、他の病気等による死亡を除いた生存率である「相対生存率」で記載しています。
出典:膵臓がん 2013-2014年5年生存率|国立研究開発法人国立がん研究センター
ステージIV期と診断された場合、末期がんと思いがちですが、必ずしもそうとはいえません。厚生労働省によると、末期がんは「治癒を目指した治療に反応せず、進行性かつ治癒困難又は治癒不要と考えられる状態と医師が総合的に判断した場合」と定義しています。
引用:特定疾病における「がん末期」の取扱い等について|厚生労働省
膵臓がんになりやすい人の特徴
膵臓がんになりやすいといわれている人は、以下のとおりです。
- ・喫煙者
- ・飲酒量の多い人
- ・糖尿病患者
- ・慢性膵炎患者
- ・膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)患者
- ・膵臓に嚢胞性病変がある人 など
家族性膵臓がんといって、親子または兄弟姉妹のなかで2人以上膵臓がん患者がいる家系の場合、いない家系の10倍近く膵臓がんの発症率が高いとの研究結果もあります。
家族が末期の膵臓がんと診断されたら
早期発見が困難で予後不良といわれている膵臓がんですが、家族が末期の膵臓がんと診断された場合どのような対処方法があるのでしょうか。ここでは、患者本人や膵臓がんとの向き合い方について解説します。(具体的な療養については後述します。)
膵臓がんの末期症状との家族の付き合い方
膵臓がんの末期症状は、体重減少、糖尿病の併発・悪化、背部痛、黄疸などが代表的であることは先述のとおりです。特に余命1ヶ月くらいの状態では、食欲が低下し、飲み込む力が弱まってきます。その際は、ゼリーやプリンなど、とろみのあるものを食べさせると良いでしょう。
食欲が低下するとともに筋力も衰えてきます。家族は無理をせずに、訪問看護や介護サービスなどの利用も検討しましょう。訪問診療や訪問看護、介護サービスなどは、患者と家族が一緒に過ごす時間を大切にするための手助けとなることもあります。
余命わずかになると、せん妄や意識障害が出ることがあります。家族は伝えたいことをきちんと伝え、会ってもらいたい人に会わせるなどの配慮をすると、患者本人も家族も安心できます。リラックスして昔話をするのも、心地よく過ごせるようです。
がんに関する情報とはうまく付き合う
がんに関する情報は、さまざまなものがあります。患者のために可能性を模索し、たくさんの情報を集めたくなるものです。
しかし、大切なのは適切な情報を集め、病状や治療への理解を深めること。情報が確かなものかどうか迷ったときは、医療従事者や「がん相談支援センター」に相談すると良いでしょう。
参考:がん相談支援センター|国立がん研究センター がん情報サービス
患者本人の気持ちを理解するよう努める
病気になると、気持ちが不安定になりがちです。その時々で、気持ちが変化することもあるでしょう。患者の不安や落ち込みを理解し、その時の本人の気持ちや希望を尊重することが大切です。
家族自身も自分を大切にする
患者の気持ちに寄り添うことはもちろん大切ですが、患者を支えるためには、家族の身体と心も大切です。特に闘病期間が長くなってくると、身体も心も疲弊してきます。
できるだけ日常生活も大切にし、維持できるよう努めましょう。悩みや困りごとがあれば、患者の主治医や看護師などに相談するのも良いでしょう。
膵臓がん末期の予後や療養
膵臓がんは早期発見がしにくく、発見時には末期になっていて余命宣告されるケースも多いです。そのため、膵臓がんは予後不良といわれることがあります。
外科手術後は、胆汁や膵液の減少がみられることがあるので、消化の良い食事を摂ると良いでしょう。少量ずつ数回に分けて食事を摂る、脂肪分を摂りすぎない、刺激物は控えめにする、などの対策も必要です。
また、膵臓がんと糖尿病の関係は密接です。膵臓がんの手術によりインスリンの分泌が低下し、糖尿病が発症したり、悪化したりすることもあります。血糖値の変動には注意して過ごしましょう。