前立腺の痛みは何が原因?考えられる病気や必要な検査について解説
男性特有の臓器である前立腺。前立腺や下腹部に痛みがあるときに考えられる病気があります。
本記事では、前立腺の病気やその症状、痛みを伴うときに必要な検査などについて解説します。病気の原因と考えられることについても触れていますので、予防の参考にしてみてください。
目次
前立腺とは
前立腺は男性特有の臓器で、膀胱のすぐ下あたり、尿道を囲んでいる場所に位置します。構造は一番外側の辺縁領域が「外腺」と呼ばれ、尿道周辺の中心領域・移行領域は「内線」と呼ばれます。
前立腺は前立腺液をつくる臓器です。前立腺液は精液の一部で、精子の保護や運動機能を助ける役割があります。前立腺の生理作用は、精巣で作られる男性ホルモン(テストステロンなど)が維持しています。
前立腺の痛みを伴う病気と症状
前立腺の痛みを伴う病気として考えられるのは、「前立腺がん」「急性前立腺炎」「慢性前立腺炎」などがあります。加齢により起こりやすい前立腺肥大症では、痛みを伴うケースはあまりなく、頻尿や残尿感などが代表的な症状です。
ここでは、前立腺の痛みを伴う3つの病気の症状などについて解説します。
前立腺がん
前立腺がんは、前立腺の細胞が異常増殖して発生するがんで、比較的進行が遅いとされています。早期は症状に乏しいですが、尿が出にくい、頻尿などの症状が出ることがあります。
痛みが出るのは、近くのリンパ節や骨に転移しているケース。下半身や腰などに痛みが出ることがあります。
関連ページ:
前立腺がんの死亡率はどのくらい?リスク因子や予防についても解説
急性前立腺炎
急性前立腺炎は、前立腺に炎症が起こる病気です。
痛みを伴う症状は、排尿痛、筋肉痛、関節痛など。そのほかの症状としては、38℃以上の発熱、悪寒、残尿感などで、急激に強い症状が出ることが多いという特徴をもっています。治療が遅れることで重症化しやすく、敗血症などの生命に関わる病気になるケースもあります。
急性前立腺炎の多くは、細菌感染を原因とした「急性細菌性前立腺炎」です。
慢性前立腺炎
前立腺の炎症が慢性的に続く場合、慢性前立腺炎となります。
慢性前立腺炎は、細菌感染が原因の「慢性細菌性前立腺炎」と、細菌感染のない「慢性非細菌性前立腺炎」に分類され、「慢性非細菌性前立腺炎」のほうが多いとされています。
痛みを伴う症状は、下腹部、会陰部、腰などの疼痛。射精時痛や、陰嚢部や鼠径部、尿道などに不快感が現れることもあります。いずれも劇的な痛みというよりは、疼痛や放散痛、不快感などの慢性的な痛みとなることが特徴です。
そのほか、頻尿や残尿感、血精液症などの症状が出ることがありますが、発熱はないケースがほとんどです。
当てはまる症状がある方は、お気軽にこちらからご相談ください。
前立腺の痛みがあるときに必要となる検査
前立腺の痛みがあるときは、病気の種類やタイプを判断するために検査を行います。ここでは、どのような検査をする可能性があるのかについて解説します。
尿検査
前立腺の痛みがある場合、尿検査を行うことが原則です。尿を採取し、白血球の値や細菌培養検査などから細菌感染の有無を調べます。
場合により、専用のトイレで「尿流測定(ウロフロメトリー検査)」を行い、尿の量・勢い・時間などを調べることもあります。
血液検査・PSA検査
血液検査では、炎症マーカーや腫瘍マーカー(PSA値)を測定します。炎症マーカーは、前立腺炎が急性か慢性かを判断するのに用います。
PSA検査は腫瘍マーカー検査の一種で、PSAという前立腺から分泌されるたんぱく質の血中濃度を測定します。PSA値は前立腺炎でも前立腺がんでも高い値を示すことがありますが、前立腺炎の治療で値が下がらない場合、前立腺がんの可能性が高いとされています。
直腸診
直腸診は、肛門から指を入れて直腸側から前立腺を触る検査です。前立腺を圧迫し、痛みや腫れ、違和感などの状態を調べます。
急性細菌性前立腺炎が疑われる場合、菌が血液中に入ってしまうことを防ぐため、強く圧迫する検査は行わない場合もあります。
画像検査
超音波(エコー)検査、MRI検査、CT検査などの画像検査が行われることもあります。超音波検査では、超音波プロープを肛門から挿入し、前立腺の大きさ、形、内部の石灰化、静脈の拡張などを調べます。
MRI検査やCT検査は前立腺がんが疑われる場合に用いられることが多い検査です。がんの場所の特定や、転移の有無などを調べます。
前立腺の病気の原因とされるもの
先述した「前立腺がん」「急性前立腺炎」「慢性前立腺炎」の原因と考えられていることについて解説します。
前立腺がん
前立腺がんの原因(リスク因子)と考えられているものは、家族歴や高年齢が挙げられます。日本国内では、第一近親者(親子または兄弟)に前立腺がん患者が1人いる場合の罹患リスクは、いない場合の5.6倍とされています。
そのほか、欧米型の食習慣や肥満、カルシウムの過剰摂取なども挙げられますが、まだ特定には至っていません。
出典:前立腺がん 診療ガイドライン|日本癌治療学会 がん診療ガイドライン
急性前立腺炎
急性前立腺炎の場合は、細菌性であることが多く、尿道から尿に含まれる細菌などが浸入する「逆行性感染」が原因とされています。
睡眠不足・疲労などで免疫力が低下していると、感染しやすくなるといわれています。
慢性前立腺炎
慢性細菌性前立腺炎の場合は、細菌の感染が原因となります。
慢性非細菌性前立腺炎の場合は、静脈がうっ血する血流障害が主な原因と考えられており、「骨盤内うっ血症候群」「慢性骨盤疼痛症候群」などから引き起こされるとされています。長時間のデスクワークや運転、自転車のサドルでの圧迫など、血流に負荷がかかることがリスク因子と考えられています。