皮膚がんの生存率はどのくらい?症状や検査方法についても解説
皮膚がんは、皮膚にできる悪性腫瘍の総称です。本記事では、代表的な皮膚がんである「基底細胞がん」「有棘細胞がん」「悪性黒色腫」の3種類について、生存率や症状、検査方法などを解説します。
目次
皮膚がんとは
皮膚がんは、「皮膚がん」という一つのがんを指すのではなく、皮膚にできる悪性腫瘍の総称のことです。人口10万人あたり6例未満の稀ながんである「希少がん」に分類されます。
皮膚がんのなかで最も多いのが「基底細胞がん」、次いで「有棘(ゆうきょく)細胞がん」、最も悪性度が高いのが「悪性黒色腫(メラノーマ)」とされています。その他、「メルケル細胞がん」、「乳房外パジェット病」、「皮膚のリンパ腫」、「皮膚血管肉腫」などがあります。
ここからは、代表的な皮膚がん3種類について解説していきます。
基底細胞がん
皮膚の構造は、表皮・真皮・皮下組織に分かれています。表皮の最下層にある基底細胞や毛包の細胞から発生する腫瘍が「基底細胞がん」です。
基底細胞がんの主な発生要因は、紫外線や放射線とされています。転移しにくいとされていますが、中央部分が潰瘍になり、周辺組織を破壊しつつ進行することがあります。
有棘(ゆうきょく)細胞がん
有棘細胞がんは、皮膚の表皮にある有棘層の細胞が悪性化するがんです。発生要因は紫外線、放射線、化学物質、ウイルス、やけどのあとなどが関係していると考えられています。
リンパ節や他臓器への遠隔転移を伴うことがあります。
悪性黒色腫(メラノーマ)
悪性黒色腫はメラノーマとも呼ばれ、皮膚の色素細胞であるメラノサイトが悪性化するがんです。比較的白人の罹患率が高く、日本人では人口10万人あたり1~2人が罹患する希少がんとされています。
見た目等の特徴により、高齢者の顔面に発生しやすい「悪性黒子型」、身体の中心部や手足の付け根に発生しやすい「表在拡大型」、部位に関係なくがん細胞のかたまりが大きくなる「結節型」、手足の裏や爪に発生しやすい「末端黒子型」の4種類に分類されます。「ほくろのがん」ともいわれ、良性のほくろとの区別がつきにくいのも特徴です。
発生要因は外傷や切除、紫外線、やけどのあとなどと考えられています。
皮膚がんと思われる症状がある方は、お気軽にこちらからご相談ください。
皮膚がんの生存率
皮膚がん全般の5年相対生存率は94.6%とされています。皮膚がんは早期発見できれば予後が良好とされ、5年生存率も高いがんのひとつです。
ここでは、代表的な皮膚の悪性腫瘍について、生存率を解説します。
基底細胞がん
基底細胞がんを早期発見できた場合の5年生存率は、90~95%程度とされています。
有棘(ゆうきょく)細胞がん
有棘細胞がんの5年生存率は、病変の直径が2cm以下で99%程度、5cm以上で85%程度とされています。遠隔転移がある場合は、3年生存率が45%程度とされています。
悪性黒色腫(メラノーマ)
悪性黒色腫の5年生存率は、1mm以下の厚みでほぼ100%、4mmを超えると50%程度まで下がります。
所属リンパ節転移がある場合の5年生存率は40%程度、遠隔転移がある場合の5年生存率は数%とされています。
参考サイト:黒色腫(悪性黒色腫)|MSDマニュアル家庭版
皮膚がんの症状や発生部位
ここからは、代表的な皮膚がんの症状について、詳しく解説します。
基底細胞がん
基底細胞がんは、直径1~2mmの黒い点が皮膚に現れ、その点が集まって円や楕円の形状になることが多いです。ほくろに似ていますが、色が青黒く光沢があるものが多いともいわれます。まれに赤みのある病変となることもあります。
身体の表面の皮膚にならどこにでもできますが、顔に発生するケースが多く、特に高齢者の眼瞼や鼻に発生することが多いがんです。大きくなると中央部分が凹んで潰瘍になり、周辺の組織を壊しながら進行していく可能性があります。
有棘(ゆうきょく)細胞がん
有棘細胞がんでは、皮膚の色が肌色または紅色に変化し、いぼのような盛り上がりやしこりができます。びらんや潰瘍となって出血したり、皮膚の表面に硬い角化性結節が現れたりすることもあります。顔面に発症することが多いがんですが、頭皮に発生することもあります。
進行してくると、腫瘤から体液が染み出したり、悪臭が発生するケースもみられます。
悪性黒色腫(メラノーマ)
悪性黒色腫は、ほくろやシミによく似た褐色や黒色の色素斑が皮膚表面に現れます。
良性のほくろとの違いとして、非対称で不規則な形、大きさが6mm以上、色むらがある、病変境界が不明瞭、大きさや硬さが変化する、などが挙げられます。
「悪性黒子型」は顔面に発生しやすく、不規則な形のシミが徐々に広がるタイプ。「表在拡大型」は胸・背中・お腹など身体の中心部や手足の付け根に発生しやすく、色白の人に発生するケースが多いタイプ。「結節型」は発生部位に特徴はなく、結節のようながん細胞のかたまりが徐々に大きくなっていくタイプ。「末端黒子型」は手のひらや足の裏、爪などに発生しやすいタイプです。
悪性黒色腫自体は、皮膚だけでなく粘膜や眼にできる場合もあります。
皮膚がんにおいて特に注意したい症状
皮膚がんにおいては、特に注意したい皮膚の変化があります。以下をご参考下さい。
・ここ数ヵ月の間にほくろが大きくなった、盛り上がってきた、出血した
・シミが大きく(6mm以上)広がってできた
・左右非対称でフチがギザギザとしたほくろができた
・爪に黒い線が入った
・顔や手、お尻などにできた湿疹がステロイド軟膏を使っても、2週間以上治らない
・昔やけどしたり怪我した部分に、湿疹のようなものができて治らない
・陰部や肛門周辺などに、赤い斑点や皮膚の一部が白くなったような湿疹ができた
・最近、頭をぶつけたところの、あざが治らない
・以前リンパ節を郭清し、リンパ浮腫があった腕や足にあざのようなものができた
皮膚がんの検査方法
代表的な皮膚がんの検査や確定診断にはどのような方法があるのか、皮膚がんの種類ごとにみていきましょう。
基底細胞がん
基底細胞がんの疑いがある場合、「ダーモスコピー検査」を行うのが一般的です。これは、ダーモスコープと呼ばれるライト付きの拡大鏡で病変部を詳しくみる検査です。10~20倍に拡大して診るため、より詳しく診断ができます。
ダーモスコピーの精度は高いことが証明されていますが、診断が難しい場合は病変の一部を切り取って生検を行うこともあります。そのほか、進行度を調べるために、CT検査やX線検査などの画像検査を行う場合もあります。
有棘(ゆうきょく)細胞がん
有棘細胞がんの疑いがある場合は、病変の一部を切り取って生検(生検組織診断)を行い、確定診断をします。そのほか、進行度を調べるために、CT検査やX線検査などの画像検査を行う場合もあります。
悪性黒色腫(メラノーマ)
悪性黒色腫の疑いがある場合は、基底細胞がんと同様、ダーモスコピー検査を行うのが一般的かつ重要視されています。視診が重要視される理由は、生検を行う際に腫瘍の播種や転移を誘発する可能性があるためです。
生検を行う場合は、小さな腫瘍の場合は全体を切除、大きな腫瘍の場合は一部を切り取って検査し、早期に広範囲の切除を行います。所属リンパ節への転移が明らかでない場合は、がんが最初に転移するセンチネルリンパ節の生検を行うこともあります。