高齢者(65歳以上)の胃がんにおけるステージや余命について
日本人の罹患率が高い胃がん。本記事では胃がんのステージや、高齢者が胃がんと判断された場合の進行や余命について解説します。
※本記事では65歳以上を高齢者とし解説します。
目次
胃がんとは
胃がんとは、胃の内側の粘膜ががん化し、増殖していくがんです。他臓器への転移や、腹部でがんが散らばる腹膜播種がみられることもあります。死亡率は肺がんに次いで高いがんで、日本人男性では60代以上の罹患率が高くなっています。
胃がんの中でもスキルス胃がんは胃壁の内部を侵すがんのため、内視鏡検査では見つかりにくく、進行してから見つかるケースが多いがんです。
胃がんの症状
早期の胃がんでは自覚症状は出にくく、かなり進行してからでないと症状が出ないことが多いです。症状は胃潰瘍や胃炎などと似ており、食欲不振・胸やけ・吐き気・背中や胸の痛み・倦怠感などが主なものです。
進行してくると、食べ物のつかえや体重減少などの症状が出てきます。
胃がんの原因
胃がんの原因は主にヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)の感染であると考えられています。ピロリ菌未感染で胃がんになることは極めてまれであるとされ、胃がんに罹患した人のなかで、ピロリ菌感染陽性率は90%以上という研究結果もあります。
そのほかに考えられる要因としては、喫煙・塩分の摂りすぎなどが挙げられます。
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胃がんのステージとは
胃がんのステージは、進行度合いによって大きく4段階に分けられます。胃がんの浸潤度合いとリンパ節転移の程度によりステージが決まります。
早期発見はステージI、ステージIIでは3人に1人が亡くなるといわれ、ステージIVでは5年生存率が10%未満という統計もあります。
ここからは、胃がんのステージについて詳しく解説します。
ステージIA期・IB期
胃がんのステージIは2段階に分かれます。がんの粘膜への浸潤が1段階、リンパ節転移が1段階でIA期。どちらか一方が2段階でIB期となります。ステージIの5年生存率は95%前後とされています。
ステージIAではがんが粘膜にとどまっているため、内視鏡による除去が可能です。IB期はガンが粘膜下層まで浸潤、またはがんが粘膜にとどまりリンパ節転移が2個までとされていますが、基本的にはIB期でも内視鏡による切除が可能で、再発の可能性は低いでしょう。
ステージIIA期・IIB期
ステージIIも2段階に分かれ、IIA期とIIB期があります。
IIA期は以下の3つのいずれかの状態を指します。
- 1.胃がん浸潤が粘膜下層まで、かつリンパ節転移が6個まで
- 2.胃がん浸潤が筋層まで、かつリンパ節転移が2個まで
- 3.胃がん浸潤が漿膜まで、かつリンパ節転移なし
IIB期は以下の4つのいずれかの状態を指します。
- 1.胃がん浸潤が粘膜下層まで、かつリンパ節転移が15個まで
- 2.胃がん浸潤が筋膜まで、かつリンパ節転移が6個まで
- 3.または胃がん浸潤が漿膜下層まで、かつリンパ節転移が2個まで
- 4.がんが腹腔内にはみ出しているが、あきらかな腹膜浸潤はない
ステージIIでは、内視鏡による切除、あるいは開腹手術を行います。いずれも再発の可能性があります。5年生存率は約80%とされています。
ステージIIIA期・IIIB期・IIIC期
ステージIIIは大きく3段階に分かれます。
IIIA期は以下の3つのいずれかの状態を指します。
- 1.胃がん浸潤が筋層まで、かつリンパ節転移15個まで
- 2.胃がん浸潤が漿膜まで、かつリンパ節転移6個まで
- 3.胃がん浸潤が漿膜を超えているが、あきらかに腹膜に転移がなく、リンパ節転移が2個まで
IIIB期は以下の3つのいずれかの状態を指します。
- 1.胃がん浸潤が漿膜まで、かつリンパ節転移が15個まで
- 2.胃がん浸潤が漿膜を超えているが、あきらかに腹膜に転移がなく、リンパ節転移が2個まで
- 3.胃がん浸潤が腹膜まで、かつリンパ節転移が2個まで
IIIC期
- 1.胃がんが漿膜をギリギリ超えて腹膜に少し浸潤し、リンパ節転移が15個まで
- 2.あきらかに胃がん浸潤が腹膜にあり、リンパ節転移が15個まで
ステージIIIの胃がんでは、開腹手術で除去できるガンは取り除くことに加え、化学療法を用いて手術で取りきれなかったがんの治療をすることが一般的です。IIIC期では完全ながんの切除はほぼ不可能なケースが多く、5年生存率は約54%とされています。
ステージIV期
肝転移などの遠隔転移や腹膜播種があればステージⅣと診断されます。特に腹膜播種が見られる場合はスキルス胃がんである可能性も高く、発見された時点でステージⅣであることが多いです。
ステージIVの胃がんでは、抗がん剤などでガンを小さくすることを目標に治療をし、ステージIII期以下になれば手術が可能になるケースもあります。ステージIVの5年生存率は10%以下とされています。
高齢者の治療には配慮が必要
がん治療において、臨床試験により化学的根拠が明らかになっている「標準治療」では、75歳以上の高齢者の治療が確立されていません。高齢者の標準治療では、若い人より副作用や合併症のリスクが高くなると考えられますが、実年齢よりも身体やがんの状態をみて治療方法が検討されることが多いようです。
高齢者の場合は特に、寝た状態が続くと体力や筋力が急激に衰え、肺炎などにもなりやすいというリスクもありますので、治療後にも配慮が必要となります。
高齢者の胃がんにおける予後(余命)
高齢者は全身状態の個人差が大きいため、余命や予後は一概に定義できません。また、糖尿病などの持病の有無でも大きく異なります。
一般的には、ステージIV=末期と考えられがちですが、余命3~6カ月の状態を末期とすることが多いようです。
「高齢者のがんは進行が遅い」は本当か
一般的に高齢者のがんは進行が遅いと思われがちですが、ひとつに悪性度の低いガンは進行が遅いため、ガンになってから発見されるまでに時間がかかり、高齢で発見されることもある、というのがその理由といえるでしょう。悪性度の高いがんの発生に年齢は関係なく、75歳以上の高齢者でも発生することがあります。つまり、高齢者だからといって一概にがんの進行が遅いとはいえないのです。