胃がんの原因は何?ピロリ菌との関係や予防などについて解説
胃がんの原因として多くの方が思いつくのは「ピロリ菌」ではないでしょうか。
本記事では、「ピロリ菌」の概要から除菌まで詳しく解説。また、その他の原因として考えられることや、予防や早期発見のポイントについても解説していますので、参考にしてみてください。
目次
胃がんの原因とされるもの
胃がんの原因とされるものは、はっきりと解明されてはいませんが、リスク要因としては大きく分けて「ピロリ菌」と「生活習慣」があります。
胃がんの原因①ピロリ菌(ヘリコバクターピロリ)
まず、胃がんの原因の約90%を占めると考えられているピロリ菌について、詳細を解説します。
ピロリ菌(ヘリコバクターピロリ)とは
ピロリ菌は「ヘリコバクターピロリ」ともいい、胃粘膜に感染し胃炎を引き起こす細菌です。胃がんのほかにも慢性胃炎、胃・十二指腸潰瘍、胃過形成性ポリープ、胃MALTリンパ腫などの病気の原因とも考えられています。
胃の中には胃酸があり、通常の菌は生息できませんが、ピロリ菌は「ウレアーゼ」という酵素を発生して胃酸を中和するため、胃の中で生き続けられます。
感染しただけで症状が出ることはありませんが、酵素と尿素が反応して発生したアンモニアで胃粘膜が傷つけられたり、ピロリ菌から胃を守ろうとする反応で胃粘膜に炎症が起こったりすることがあります。これが長く続くと、萎縮性胃炎などの病気を引き起こす可能性があるため、胃がんの原因にもなりうるのです。
ピロリ菌の感染原因
ピロリ菌は日本人の多くが感染していると考えられており、高齢になるほど感染者が多くみられます。これは、ピロリ菌感染の原因が、井戸水などの飲み水からの感染と疑われていて、衛生環境が良くなかった時代に感染した高齢者が多いとされているためです。現代は、唾液や便からの感染が多いと考えられています。
ピロリ菌の感染検査
ピロリ菌の感染検査で保険適用になるケースは以下のとおりです。
- ・内視鏡で胃炎と診断された場合
- ・胃・十二指腸潰瘍と診断された場合
- ・早期胃がんを内視鏡治療した場合
- ・胃MALTリンパ腫または突発性血小板減少性紫斑病と診断された場合
検査方法は、内視鏡を使用する「生検法」と内視鏡を使用しない「尿素呼気試験」や「抗体測定」(血液検査)などがあります。いずれの検査も、偽陽性や偽陰性と出る可能性もあるため、検査方法や回数については医師と相談することを推奨します。
ピロリ菌の除菌
ピロリ菌の除菌は、服薬で行います。服薬は医師の指示通りに行うことが大切で、指示外の服薬方法では除菌に成功しないことがあります。一次除菌療法で除菌に成功しなかった場合は、二次除菌療法を行います。除菌に際しては、下痢や軟便、味覚異常などの副作用が起こることがあります。
胃がんの原因②生活習慣等
ピロリ菌以外のリスク因子としては、喫煙、塩分の摂りすぎ、多量の飲酒、野菜や果物の不足などの生活習慣や食習慣が挙げられます。喫煙や多量の飲酒はがん全体のリスク因子として広く知られています。胃がんにおいては塩分の過剰摂取が特徴的で、日常的な高塩分食などで胃の粘膜が破壊されると考えられています。
胃に気になる症状がある方は、お気軽にこちらからご相談ください。
胃がんの検査
胃がんの検査として主なものは、内視鏡検査(胃カメラ)とX線検査(バリウム検査)です。そのほかの検査についても解説します。
内視鏡検査(胃カメラ)
内視鏡を直接胃の内部に挿入し、食道・胃・十二指腸などの病変や広がりなどを調べる検査です。そのまま病変部分を採取して、確定診断のために病理検査をすることもあります。超音波内視鏡を使用し、がんの深さやリンパ節転移、周辺臓器への転移を調べるケースもあります。
X線検査(バリウム検査)
バリウム(造影剤)を飲み、胃粘膜の状態や胃の形などをX線で撮影する検査。簡便な検査であるため健康診断などにも用いられますが、確定診断はできません。また、早期発見にはあまり有効でないとされています。
その他の検査
・血液検査・腫瘍マーカー検査
血液検査では炎症反応、腫瘍マーカー検査では、CEAやCA19-9という数値を調べます。
・CT検査・MRI検査
身体の内部の断面を撮影する検査で、CTはX線、MRIは磁気を用いる機械です。他臓器やリンパ節転移、周辺臓器への転移・浸潤などを調べます。
・PET検査
リンパ節や他臓器転移の有無が通常のCT検査で判断できない場合に用いられます。
・注腸検査/大腸内視鏡検査
胃の近くの大腸へのがんの広がりを調べたり、腹膜播種による大腸への影響を調べたりする検査です。
・審査腹腔鏡
腹膜播種が疑われる場合に、正確なステージの診断を目的に行われる検査です。
胃がんの予防
胃がんの予防としてまず挙げられるのは、先述したピロリ菌の除菌です。
ピロリ菌感染者の胃がん発生リスクは、陰性者よりも5倍ほど高くなるといわれており、隠れ陽性者も含めると10倍ほどとされています。海外の研究では、ピロリ菌の除菌を実施した人の胃がん発生率が低下したという研究結果もありますが、まだ効果は限定的とされています。
生活習慣・食習慣の面においては、禁煙、減塩、節酒などが予防に効果が期待できるといえます。
ピロリ菌の感染は胃がん発生の大きなリスク因子とされていますが、生活習慣などの要因も合わさって胃がんが発生すると考えられるため、生活習慣の改善も重要です。
胃がんの早期発見のポイント
胃がんは進行がんでも治癒率は約50%とされますが、ステージIでの5年生存率は約96%と極めて高い統計が出ています。つまり、早期発見ができれば治癒も見込めるがんといえるでしょう。
早期発見のためには、胃がん検診が有効とされています。胃がん検診は、国が科学的根拠をもとに推奨している5つのがん検診のうちのひとつです。50歳以上が対象で、X線検査や内視鏡検査を行います。ほとんどの市区町村で、無償もしくは一部の自己負担で受けることができます。
また、保険診療外となりますが、胃がんにかかりやすいかどうかを調べたり、がんの超早期発見を目指す遺伝子検査もあります。
ピロリ菌の除菌に成功したとしても、100%胃がんにかからなくなるというわけではないので、定期的な検診や検査を受診することが推奨されています。
関連ページ:
スキルス胃がんに前兆はある?初期症状や原因についても解説
胃がんの末期症状や検査方法、5年生存率について
胃がんのステージ4とは?検査方法や手術後の療養について解説
高齢者(65歳以上)の胃がんにおけるステージや余命について