子宮頸がんは見た目でわかる?基礎知識から予防まで解説
子宮頸がんは見た目でわかるがんなのでしょうか。20代後半から罹患率が高くなるがんですが、どのようながんなのか疑問に思われる方もいるでしょう。本記事では、子宮頸がんの基礎知識から、原因や予防に至るまでを詳しく解説します。早期発見に役立てられるよう、参考にしてみてください。
目次
子宮頸がんとは
子宮頸がんは、子宮の入り口にあたる子宮頸部にできるがんです。
多くは、子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)や上皮内腺がん(AIS)などの前がん病変(異形成)を経て、がん化します。
早期発見できれば予後が良好とされますが、進行してくると治療が難しくなることがあります。また、進行すると骨盤内のリンパ節や子宮頸部の周囲の組織、他臓器に転移する可能性も出てきます。
20代後半から急激に罹患率が高くなり、30代後半から40代にかけてが罹患のピークとされています。
子宮頸がんの初期症状|見た目ではわからない
子宮頸がんは、先述した前がん状態や初期の状態では症状がないことがほとんどです。
子宮頸部は子宮の入り口(子宮体部と膣のあいだ)にあたるため、検査を行わない限り見た目でも分かりません。
進行するに従い、月経時以外の出血(不正出血)や性交時出血、においを伴うおりものや水っぽいおりものなどの症状が見られます。さらに進行すると、多量の出血、下腹部・骨盤・腰の痛み、下肢のむくみなどが生じることがあります。
子宮頸がんのステージ
子宮頸がんのステージはI期~IV期に分けられ、数字が大きくなるほど進行した状態を示します。各ステージはがんの浸潤度合い等により、さらに細かく分けられています。
進行期分類について、表を用いて解説します。
ステージ 状態 I期 がんが子宮頸部にとどまるもの(子宮体部浸潤の有無は考慮しない) IA期 病理学的にのみ診断できる浸潤がんのうち、間質浸潤が5mm以下のもの(※) IA1期 間質浸潤の深さが3mm以下のもの IA2期 間質浸潤の深さが3mmをこえるが、5mm以下のもの IB期 子宮頸部にとどまる浸潤がんのうち、浸潤の深さが5mmをこえるもの
(IA期をこえるもの)IB1期 腫瘍最大径が2cm以下のもの IB2期 腫瘍最大径が2cmをこえるが、4cm以下のもの IB3期 腫瘍最大径が4cmをこえるもの II期 がんが子宮頸部をこえて広がっているが、膣壁下1/3または骨盤壁には達していないもの IIA期 膣壁浸潤が膣壁上2/3にとどまっていて、子宮傍組織浸潤は認められないもの IIA1期 腫瘍最大径が4cm以下のもの IIA2期 腫瘍最大径が4cmをこえるもの IIB期 子宮傍組織浸潤が認められるが、骨盤壁までは達しないもの III期 がんの浸潤が膣壁下1/3まで達するもの、ならびに/あるいは骨盤壁にまで達するもの、ならびに/あるいは水腎症や無機能腎の原因となっているもの、ならびに/あるいは骨盤リンパ節ならびに/あるいは傍大動脈リンパ節に転移が認められるもの IIIA期 がんは膣壁下1/3に達するが、骨盤壁までは達していないもの IIIB期 子宮傍組織浸潤が骨盤壁にまで達しているもの、ならびに/あるいは明らかな水腎症や無機能腎が認められるもの(がん浸潤以外の原因による場合を除く) IIIC期 骨盤リンパ節ならびに/あるいは傍大動脈リンパ節に転移が認められるもの IIIC1期 骨盤リンパ節にのみ転移が認められるもの IIIC2期 傍大動脈リンパ節に転移が認められるもの IV期 がんが膀胱粘膜または直腸粘膜に浸潤するか、小骨盤腔をこえて広がるもの IVA期 膀胱粘膜または直腸粘膜への浸潤があるもの IVB期 小骨盤腔をこえて広がるもの ※浸潤がみられる部位の表層上皮の基底膜より計測して5mm以下のものとする。脈管(静脈またはリンパ管)への浸潤があっても進行期は変更しない。
子宮頸がんの検査・確定診断
子宮頸がんは見た目でわかるがんではなく、検査を経てがんの確定診断となります。前がん病変の異形成等も同様です。
ここでは、子宮頸がんの検査や確定診断について解説します。
細胞診
子宮頸がんの検査でまず行われるのが細胞診です。子宮頸がん検診でも用いられています。
子宮頸部をブラシ状の器具で擦り、細胞を採取。細胞の形状に異常がないかなどを顕微鏡で観察する検査です。細胞診で異常が認められた場合、さらに精密検査を行います。
コルポスコピー
コルポスコピーは、コルポスコープという膣拡大鏡を使用する検査です。コルポスコープ診や膣拡大鏡診とも呼ばれます。
コルポスコピーでは、子宮頸部の粘膜の表面を拡大し観察します。コルポスコープでの病変の見た目は、白く見えます。病変が疑われる場合、同時に組織を採取し組織診を行って、異形成やがんの確定診断となります。
その他の検査
細胞診やコルポスコピーを経て子宮頸がんと診断された場合、内診や画像検査を行います。
画像検査は主にCT、MRI、PET検査などが用いられ、がんの広がり・リンパ節や他臓器への転移有無を調べます。これらの検査の結果により、ステージが確定します。
子宮頸がんの検査について詳しくお知りになりたい方は、こちらからお電話ください。
子宮頸がんの原因
子宮頸がんのほとんどはヒトパピローマウイルス(HPV)への感染が原因とされています。
HPVは性的接触で子宮頸部に感染しますが、性交経験のある女性の半数以上が一生に一度は感染するといわれています。
また、感染した場合も通常は免疫により排除されますが、感染したままの状態が続くことにより異常な細胞が増殖し、数年~数十年かけてがん細胞になるというのが発生のメカニズムです。
HPV感染以外の原因としては、喫煙により子宮頸がんの発症が高まることが分かっています。
子宮頸がんになりやすい人の特徴
HPVへの感染が子宮頸がんの原因の多くを占めるということは、性交渉の回数やパートナーの人数が多いほど感染機会が増えるといえます。しかし、1回の性交渉でも感染する可能性はあるため、「回数や人数が多い=HPVに感染する」とはいいきれません。
その他、喫煙、免疫力低下、多産、ピルの長期服用なども子宮頸がんとの関連性があると考えられています。
子宮頸がんの予防や早期発見のポイント
子宮頸がんのネット・サバイバル(生存率)は、ステージIで94.9%、ステージIVで25.9%とされています。ステージIの生存率が比較的高く、早期発見できれば治癒も見込めるがんといえるでしょう。
ここでは、予防や早期発見のポイントについて解説します。
出典:子宮頸がん2014-2015年5年生存率|国立研究開発法人 国立がん研究センター
子宮頸がんの予防|HPVワクチン
子宮頸がんの予防には、HPVワクチンの接種が有効とされていて、子宮頸がんの50~70%を防ぐことができるといわれています。
とくに前がん病変やがんに進展しやすいHPV16型・HPV18型への感染は、ワクチンにより防ぐことができると明らかになっています。
HPVワクチンは、初めての性交渉より前に接種することが望ましいとされ、厚生労働省は小学校6年生から高校1年生の女子へ「接種のお知らせ」を個別送付しています(公費負担での接種が可能です)。
万一HPVワクチン接種後に心配な症状が現れた場合は、まず接種した医療機関を受診することが推奨されています。また、都道府県単位で協力医療機関のサポート体制が整えられており、厚生労働省のHPなどで確認できるようになっています。
出典:
子宮頸がんとHPVワクチンに関する正しい理解のために|公益社団法人 日本産科婦人科学会
ヒトパピローマウイルス感染症~子宮頸がん(子宮けいがん)とHPVワクチン~|厚生労働省
子宮頸がんの早期発見のために
子宮頸がんの早期発見のためには、定期的な検診の受診が有効です。HPVワクチンを接種した場合も、子宮頸がん検診を受けることが推奨されています。
子宮頸がん検診は、20歳以上の女性を対象に2年に1回の受診が推奨されており、無償または一部の自己負担で受診できます。
検診では、問診や子宮頸部の細胞診を行います。検診の結果が「要精密検査」となった場合は、必ず精密検査を受けることも早期発見のポイントです。
また、有償の検査としては、がんにかかりやすいかどうかや、超早期発見を目的とした遺伝子検査もあります。
関連ページ:
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