アブスコパル効果とは、がん治療法の一つである光免疫治療において注目されている現象です。光免疫治療は、特定の薬剤を体内に投与した後、がん細胞が集まっている部位に光を照射することで、その薬剤を活性化させ、がん細胞を破壊する方法です。驚くべきことに、この治療は光を直接照射したがん細胞だけでなく、体内の他の場所にあるがん細胞（転移巣）にも効果が及ぶことがわかっています。これがアブスコパル効果と呼ばれるもので、光が直接届かない転移巣がん細胞が縮小したり、消失したりすることを指します。
この効果のメカニズムは完全には解明されていませんが、免疫系が強く刺激されることで、体内の免疫細胞が活性化され、照射されていないがん細胞を攻撃すると考えられています。光免疫治療によって一部のがん細胞が破壊されると、がん細胞の断片が体中に拡散し、それが免疫応答を引き起こして転移巣にも効果をもたらす可能性があります。
アブスコパル効果は、がん治療の新たな地平を開く可能性を秘めており、照射が困難な転移巣がんへの治療オプションとして期待されています。今後の研究によって、より多くのがん患者に希望をもたらす治療法となることが期待されています。

治療のメカニズムは、光感受性剤が活性化された際に生じる一連の化学反応によって成り立っています。この反応により、細胞を破壊する酸素の活性種が生成され、がん細胞を効果的に殺すことが可能になります。このプロセスは、健康な細胞に最小限の影響を与えるように調整されており、従来のがん治療法に比べて副作用が少ないという利点があります。

レーザー光照射は、特定の光感受性物質を含む細胞にのみ作用し、これらの物質を含まない細胞には影響を与えません。このため、低侵襲性を保ちつつ正常細胞を保護し、がん細胞だけを効果的に除去することができます。
レーザー光と聞くと、細胞を高温で切断するイメージがありますが、この治療法で使用されるレーザーは非常に低出力です。実際に手に当てても熱をほとんど感じない程度であり、手術で使用される高出力のレーザーメスとは異なります。
この治療法の鍵となるのは、光感受性物質に反応する特定の波長の光を照射することです。治療には、市販のレーザーポインターと同じくらいの低出力の光が使用されます。

光免疫療法は、特に手術が困難ながんや、従来の化学療法や放射線療法が効果を示さない場合に有効な選択肢として期待されています。さらに、この治療法は個々の患者に合わせて調整することが可能で、パーソナライズドメディスンの一環としても注目されています。